橋本聖子氏が若者90人に語った60分。「声をあげてもいいんだ」チャットはコメントであふれた

橋本聖子新会長は「政治という部分も諦めたいと思っている人、たくさんいると思います。でも『いいや、もう政治に頼ったって仕方ない』と思ってしまわれると、非常に困るんです」と呼びかけた。

「年齢なんて関係ない。議員なんて偉くない。ぜひどんどん声をあげて」

東京オリパラ組織委の新会長に就任した橋本聖子氏は2月22日、30歳未満の若者によるプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」主催のオンラインイベントで若者と語り合い、こう呼びかけた。

イベントには、男女共同参画担当相だった橋本氏と30歳以下の若者ら約90人が参加。Zoomで、選択的夫婦別姓などについて率直な意見を交わした。

就任あいさつをする東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長=2021年02月19日、都内
就任あいさつをする東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長=2021年02月19日、都内
時事通信社

「若者の声が胸に突き刺さった」

政府が2020年末にまとめた第5次男女共同参画基本計画の策定にあたり、同プロジェクト(桜井彩乃代表)は9月、30歳未満の若者らから集まった約1000件の意見をとりまとめて「ユースからの提言」として橋本氏に提出していた。

橋本氏はこれらの意見すべてに目を通したといい、イベントの中で「ユースの声が胸に突き刺さった」と語った。

「誰も取り残すことのない住みやすい社会にしていくために声をあげてくれれば、議員はそのために何かしたいと思っている人ばかり。ぜひ声を届けてほしい」

橋本氏が語る間も、チャットには参加者から「声をあげてもいいんだ、という第一歩になった」「声を上げ続けることは無意味じゃない、って本当に気がついた第5次計画でした」などのコメントが相次いで書き込まれていた。

選択的夫婦別姓の導入を求めるコメントも続々…

「自分が生きているうちに、選択的夫婦別姓は実現する可能性はあるのでしょうか」

チャットには、選択的夫婦別姓について大学生からこんな意見も寄せられた。

同プロジェクトでは、選択的夫婦別姓の導入を求める若者らの署名を3万筆超を集め、橋本氏に手渡している。

これを受け、橋本氏は、2020年10月の国会答弁で選択的夫婦別姓について踏み込んだ答弁を行っていた。

この問題については、国民の間にさまざまな意見があるものと承知していますが、わが国の深刻な少子高齢化を食い止めるためには、国民、とりわけ若い世代のこうした意見をしっかりと受け止めて、十分に配慮する必要があると考えております。

2020年10月28日の衆院本会議

選択的夫婦別姓について答弁する橋本聖子男女共同参画担当相(当時)=2020年10月28日、衆院本会議
選択的夫婦別姓について答弁する橋本聖子男女共同参画担当相(当時)=2020年10月28日、衆院本会議
時事通信社

イベントで、橋本氏はこの答弁について、「これからの世代の方たちのために、しっかりとした前向きな答弁をするべきだとすごく勇気づけられました。政治家として、どんなことがあっても勇気を持って発信をしていかなければいけないと思わせてもらいました」と振り返った。

さらに、選択的夫婦別姓について改めて「早急に解決していかなければいけない問題の一つ」と強調。

担当相を辞したことで「ユースと一緒に『大臣、これはやらなければダメだ』と言えるようになった」と語った。


チャット欄に溢れた若者の声「どうせ届かないと思っていたけれど…」

約1時間のイベント中、参加者からはコメントがひっきりなしに寄せられていた。

「橋本さんのようにユースの意見を聞いてくれる議員さんを教えてください」

 

「ずっと、どうせ届かないと思っていましたが、若者でも声をあげたらちゃんと届くんだということに気づきました」

 

「夫婦別姓も自分の結婚までに選択できるようになってほしいなあと切に思っています」

 

「政治家の男女比率を是正していくことも必要ですが、若い議員へ立場を与えるような活動はありますか?」

 

「諦めたくならないような政治を行動で見せていただきたい」

 

「私たちは国会議員をいつも見ていますが、国会議員は私たちのことを見ているのですか?」

 

「議員になろうかなと思いました」

声をあげるZ世代は増えている。

主催した桜井さんは、「年齢差、接点の少なさ、手段(FAX、電話)の古さなど、若者が議員に直接声を届けるには多くのハードルがありますが、これからもジェンダー平等という切り口で、若者と議員の対話の場を設け、ハードルを取り除いていきたい」と手応えを語る。

イベントの最後、橋本氏は「全ての物事に対して諦めないで」と訴え、参加者にこう呼びかけた。

「政治という部分も諦めたいと思っている人、たくさんいると思います。でも『いいや、もう政治に頼ったって仕方ない』と思ってしまわれると、非常に困るんです」

「私たちはやはり(有権者に)選ばれている。選ばれた人間だからこそ、問いただすところは問いただす。年齢なんて関係ない。有権者がいて議員があるので、議員を育ててください。議員は偉くなんかない。世の中の空気や声を身近で感じることができなければ、議員としての役割を果たすことはできません。ぜひ、どんどん声を上げて、議員を使ってください」

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。

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