東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会・森喜朗前会長が、女性を蔑視する発言をした問題。再発防止策などを求める抗議署名の発起人らが2月16日、大会組織委を訪れ、集まった約15万7000筆の署名を提出した。
発起人によると、組織委側から面会の場で、森会長の発言について「女性蔑視だったと認識している」という発言があったという。
森会長本人や武藤敏郎事務総長はこれまで、発言を「不適切」と表現してきた。
組織委と面会、何を話した?「女性蔑視発言だったと認識している」
署名を呼びかけたのは、20~30代の女性11人。15日いっぱいで締め切り、15万7425筆の賛同が集まった。
発起人の能條桃子さん(一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表)、鶴田七瀬さん(一般社団法人ソウレッジ代表)、櫻井彩乃さん(#男女共同参画ってなんですかプロジェクト代表)、賛同人のみたらし加奈さん(臨床心理士 / mimosasメンバー)は、16日昼ごろ、組織委のある東京・中央区の晴海トリトンスクエアを訪問。
組織委で総務部長を務める横山正彦さん、持続可能性部の部長・荒田有紀さんに署名を直接手渡し、約30分にわたって面会した。
面会は、組織委の意向でメディアに非公開となった。能條さんによると、問題への認識や、今後の対応などについて話し合ったという。
「森会長の発言は『メディアの切り取り』によって問題視されたのではなくて、発言自体が女性蔑視発言で問題だったと組織委は認識しているかと質問したんですが、『しっかりと認識している』というお話がありました。それに関してはよかったのかなと思います」
面会後、報道陣の取材に応じた能條さんはそう話す。
組織委の幹部など、経営層を対象に人権に関する研修を行う必要性など、今後の対応についても話が及んだという。
「今後(ジェンダー平等の)プロジェクトチームを立ち上げたり、新しい会長を選定していく中で、今の問題を引きずったまま進むわけにはいかないと思うので、再発防止にしっかり取り組んでほしいと思います。一方で、組織委だけで変えられないこともある。組織委を取り巻くJOCや政府、東京都など色々なところに声が届ける必要があると思いました」(能條さん)
署名の発起人らは、 署名にあわせて公開質問状も提出。具体的な再発防止策をはじめ、透明性を確保するため、議事録の公開などについても質問に盛り込んだ。
「差別は『加害』であるという理解が社会でもっと深まってほしい」
署名提出後は、文部科学省で会見を開き、署名の趣旨や面会の様子を報告した。
発起人の一人である福田和子さん(#なんでないのプロジェクト代表)は、「今回の問題は森さん個人の問題ではなく、構造の問題」だと強調する。
「ただ辞任を求めるのではなく、再発防止など、彼の発言を容認してきた周りの人たちや組織がどういった対応をとるべきなのか、という点が大事だと思います」と話し、組織の構造そのものの変化を求めた。
問題をめぐっては、自民党内や政府からは森氏を擁護する声も上がった。福田さんは、「個人に対する攻撃になってよくないんじゃないかという意見もありますが、差別というのは『加害』であるという理解が社会でもっと深まるといいのではないかなと思います」と話す。
「常日頃、差別を一切容認しない姿勢が広がることで、性別や年齢に関わらず活躍できる、全ての人が安心して生きられる社会になると思います」と思いを語った。