東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会・森喜朗会長が女性蔑視発言をした問題を受け、再発防止策などを求める抗議署名に約15万人の賛同が集まった。森会長は辞任し、組織委は今後、後任を選定する。署名の発起人は2月15日までに募集を締め切り、翌16日に集まった署名を組織委に提出する方針だ。
どんな署名なのか
署名キャンペーンが立ち上げられたのは、森氏の発言から2日後の2月4日。
発起人となったのは、20〜30代の若い世代が中心だ。ジェンダー平等などを目指し社会活動を行う一般社団法人の代表や会社員、哲学研究者など11人の有志が集まった。
発起人らは、森氏の発言は女性に対する偏見や蔑視、差別だと指摘。日本政府、東京都、日本オリンピック委員会(JOC)、大会組織委の4者に対し、森氏への人事をめぐる処遇の検討を求めた。
同時に、具体的な再発防止策をはじめ、競技団体の運営指針「ガバナンスコード」にならい、東京オリンピック・パラリンピックに関わる組織の女性理事の割合を最低4割にするよう訴えている。
署名は大きな反響を呼び、15日午前10時までに14万9000人以上の賛同が集まった。
「森さんは時代遅れの人だったね」で終わらせても意味はない
森氏は12日に辞任を表明した。
署名の発起人らは、森会長の辞任について、「当然の結果だと思います」と指摘。
その上で、「この問題は森会長個人だけではなく、組織委員会や森会長を取り巻く環境の問題です」とし、「これで解決するというわけではなく、この発言を発端とした一連の動きへの反省と改善が行われる必要があるというのが、辞任ではなく組織委員会に処遇の検討をすることや再発防止を求める署名をしている私たちの気持ちです」とコメントした。
このような性差別発言が繰り返されないためには、森氏個人だけではなく、組織自体が変わる必要がある――。
署名を立ち上げたメンバーはそう強調する。
発起人に名を連ねる能條桃子さんは、若い世代に向けて政治や社会課題について発信する一般社団法人NO YOUTH NO JAPANの代表を務めている。能條さんはハフポスト日本版の取材に対し、「結局このことを森さん個人の問題として捉えて、『森さんは時代遅れの人だったね』で終わらせてしまっても意味はないのではないかと思います」と話す。
「発言が出てきた時に笑ってしまったJOCのメンバーや、森さんがこのような発言をすることを許してきてしまった組織や周りの環境も変わらないといけない。こうしたことは森さんやオリンピック委員会だけの問題ではなくて、日本中で起こっている問題だとも思います。個人というより『社会の問題』として捉えたい。その意味でも、当初から『辞任』を求める署名ではなく、『処遇』を求める署名としていました」
「発言の問題性をしっかり理解して今後に活かしてほしい」
組織委は12日の会見で、今後新たに設ける「候補者検討委員会」で後任を選定することを発表した。今週にも理事会が開かれ、後任を決めるよう準備が進められているという。
また、理事会では現状、副会長以上の役職に女性が一人もいない状態だ。組織委はジェンダー平等を推進するためにプロジェクトチームを立ち上げ、女性理事や評議員の割合を増やす方針という。
署名の発起人らは、集まった約15万人の声を届けるため、16日にも組織委に署名を提出する。
「署名提出を通じて、森会長の発言の問題性をしっかり理解して今後に活かしてほしい、そのための具体策の実施を期待しているというメッセージを伝えたいです」と思いを語った。
署名は2月15日まで受け付けている。