東京2020組織委員会の森喜朗会長の、日本ラグビー協会を念頭にした「女性が多いと会議が長くなる」という発言に対して、理事を務める稲澤裕子氏が「正しくない。事実ではない」と反論した。
2月5日にハフポスト日本版ら数社の取材に応じた。
稲澤氏は2013年、日本ラグビー協会で女性初の理事に就任。森氏が協会長を務めていた間、唯一の女性理事だった。そのため今回の森氏の発言を聞いた時、「私のことかな」と驚いたという。
日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会での森会長の発言は、「女性理事40%以上」というスポーツ庁の数値目標を懸念する理由として挙げられた。
これに対して稲澤氏は「女性が増えると発言が長いから、女性を増やすのはおかしい、大変だろうという議論の組み立ては、事実と違う」と反論。性別で一括りにしたことに違和感を表明した。
そもそもの会議のあり方として「重要なのは、話が長いか短いかではなくて、何ついて話すかです。必要な議論は時間をかけてでもするべきで、実際今のラグビー協会はそうしています」と述べた。
森氏はまた、ラグビー協会と比較する形で、組織委の女性理事を「わきまえている」と表現。競技団体出身で国際舞台で活躍したことを挙げて「的を射た発言をしている」と話した。
この点について、稲澤氏は「会議の場でわきまえているから、発言が的確というのは違う」と反論した。
森会長から制止されたという
就任当時、理事の中で唯一ラグビーの競技経験がなかった稲澤氏。第三者としての視点を提供するという役割も担っていた。
理事会で次々と質問をすると、森会長から制止されたことがあったという。
「森会長からすると、今までとは全然違う質問が飛んできて、そんなことは直接担当者に聞けばいいのではないかという気持ちになるのは、当然だと思う」と理解も示した。
「おかしいと言える社会にしたい」
稲澤氏も、ラグビー協会で唯一の女性理事だったように、これまでも男性ばかりの環境に身を置いてきたという。
見解を問われると、自身もかつては「嫌だと思いつつも、周りの話題に一緒に笑って受け流してきた」と自戒する。
その結果として「性別やジェンダーにおける無意識の偏見が根強く残っている社会の土壌を作ってしまった」と振り返った。
それを踏まえて「これからは男女問わず、おかしいと思ったらおかしいと言える社会にしたい。一人一人が言っていかなくてはならないと思いました」と訴えた。
女性が増えて感じたこと
ラグビー協会では現在、稲澤氏を含めて5人の女性理事がいる。1人だった時と比べて、より多様な議論につながっていると感じている。
男性役員がいまだ多数を占める競技団体で「女性が入ることで議論が始まり、今まで当たり前だったことが変わったり、新しいものが生まれたりする」と重要性を強調。
「女性を増やすことは、組織にダイバーシティを入れること。女性の数が増えたでなく、意見が増えたという風になると、さらに大きな変化になる」と期待した。