同意のない性行為を、罪に問えるように。
「不同意性交等罪」の新設を求める緊急の署名キャンペーンが始まっている。
現在の刑法では、「暴行・脅迫」の要件を満たさないなどの理由で、性暴力を受けても犯罪被害として認められないケースがある。
性犯罪に関する刑法改正を議論する法務省の検討会で話し合いが進んでおり、キャンペーンは、賛同の声を法改正の内容に反映させることが目的だ。
犯罪成立の高いハードル
署名を呼びかけているのは、性暴力被害者の支援団体など10以上の団体でつくる「刑法改正市民プロジェクト」。訴えの背景には、性犯罪と認定される要件のハードルが高く、立件されない事案が絶えないという問題がある。
現行の「強制性交等罪」は暴行・脅迫を、「準強制性交等罪」は心神喪失・抗拒不能をそれぞれ犯罪成立の要件としている。
プロジェクトは署名サイトで、「現行の刑法では、性暴力に苦しむサバイバーの大半は『あなたに起きたことは犯罪ではない』とみなされています」と強調する。これらの要件を見直し、「不同意性交等罪」を新たに創設することを求めている。
具体的には、威迫、不意打ち、偽計、欺罔、監禁、無意識、薬物、洗脳、恐怖、障害、疾患などに加えて、「その他意思に反した」性的行為を要件に入れることを訴えている。
「同意のない性行為は犯罪」海外でも
法律で「同意のない性行為はレイプ」とする動きは、欧州を中心に海外で広がり始めている。
デンマークは2020年12月、同意がない性行為を犯罪とする法律を可決した。
アムネスティ・インターナショナルによると、同意なしの性行為をレイプとして認めたのは、ヨーロッパではデンマークが12番目の国になった。
こうした世界の動向を刑法改正の議論に取り入れるよう求める声は、国内の専門家たちの間でも高まっている。
日本学術会議は2020年9月、「『同意の有無』を中核に置く刑法改正に向けて」と題する提言を公表した。提言は、日本学術会議の3つの分科会がまとめた。
提言の中で、「刑法改正にあたっては、諸外国の刑法改正を参考にして、少なくとも『同意の有無』を中核に置く規定(『No means No』型)に刑法を改める必要がある」としている。
性犯罪の認定をめぐるスウェーデンの刑法は、「同意のない性交は犯罪」とする各国の規定よりさらに踏み込んだ内容になっている。
2018年の刑法改正で、同国は「性行為には積極的な同意が必要」とした。「Yes」という自主性を確認できない性行為は、レイプとみなされる。
提言ではスウェーデンの事例も踏まえ、「『性的自己決定権』の尊重という観点から、可能な限り『Yes means Yes』型(スウェーデンの刑法)をモデルとして刑法改正を目指すことが望ましい」との見解を示している。
市民プロジェクトは、3月までに法務省宛に署名を提出する予定だ。
(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト)