中国の国政助言機関・全国政治協商会議が提出した「青少年の女性化を防ぐ」という提案が、現地で話題を呼んでいる。
関連するハッシュタグの閲覧回数は8億回を超え、提案自体が差別的で、生き方の多様性を否定するものだとするコメントも多い。現地メディアも「女性的な男性を一段低く見ている」と否定的な論評を掲載した。
■「男らしさは「精神のカルシウム」擁護も
話題になったのは、国政助言機関の全国政治協商会議が出した「青少年の女性化を防ぐことについての提案」だ。この場合の「女性化」は、化粧やアクセサリーをしたり、内面が旧来の「男性的」な性格でなかったりすることなどを指す。
この提案に対する中国政府教育部(日本の文部科学省に相当)の答弁が1月28日、公式サイトに掲載されたのが議論のきっかけとなった。
それによると、教育部は体育教師の指導能力向上に加え、「学生の“男らしさ”の養成に力を入れ、多くのルートを通じて体育教師の増加を図る」などとした。
このことが報道されると、教育部の回答、そして「女性化を防げ」とした提案そのものにネットユーザーから賛否の声があがり、関連するハッシュタグの閲覧回数は8億回を超えた。
現地SNS・ウェイボーをみると、「女性という言葉が否定的に扱われるのはおかしい」「性別は選べないのに、なぜ後天的な人の考えを尊重できないのか」「ステレオタイプを助長している」など批判的なコメントが多くの“いいね”を獲得している。
ネット世論の高まりもあってか、現地メディアも次々に論評を掲載した。
国営新華社は教育部の方針を擁護。「男らしさは屈強で勇敢、自信に溢れるといった素質の集合体。青少年の成長には欠かせない精神的なカルシウムだ」とした。
上海の澎湃新聞は、ウェブ上のアンケートで、約53%のネットユーザーが「女性化は矯正が必要」と回答したと指摘。一方で「男性らしい気概は肯定されるべきだし必要だ。しかしそれは男の子の生き方の自由を制限するものではない」とする論文を紹介した。
否定的な立場を明確に打ち出したのは鳳凰網だ。「もう2021年なのに、こんなことは話題になる価値もない」とし、「特定の人々への差別であり、“女性らしさ”や“母性的”を悪しとする潜在意識の現れだ」「最大の問題は、女性的な気質を差別し、女性的な男性を一段低く見ていることにある」などと痛烈に批判し、「教育とは多様な存在を受け入れるべきであり、一面的なものの見方を伝えるものではない」と結んだ。