政府が掲げる「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」について、「達成可能」と考える企業は15.8%に過ぎず、6割の企業が悲観的な見方をしている――。そんな調査結果が公表された。「50年実質ゼロ」は菅政権の看板政策だが、企業からは具体的な説明や資金援助を求める声が上がった。
対策をとっている企業は82%
帝国データバンクが1月19日に公表。1万1479社が答えた。
政府は2020年10月に「50年実質ゼロ」を宣言。昨年末には脱炭素化に向けた「グリーン成長戦略」を発表した。目標達成には、企業の取り組みやイノベーションによって、環境と経済の好循環を生み出す必要がある。
対策に取り組んでいる企業は82.6%。節電や節水、クールビズといった身近な取り組みから始めていた。一方で、27.4%が「他に優先すべき項目がある」と考えており、「新型コロナ感染防止対策に労力を使ってしまっている」(群馬、金属加工機部品製造)との声もあった。また、人材やノウハウ、費用を課題に考える企業も多かった。
「言うは易し行うは難し」
政府が掲げた目標について、17.9%の企業が「達成できない(可能性なし)」、43.4%が「達成は困難」と回答。「達成可能」と考える企業は15.8%にとどまる。
企業からは「言うは易し行うは難しで、具体的な計画と目標が分からない」(石川、し尿収集運搬)、「政府が資金面などでバックアップする必要がある」(高知、土木工事)などの声が上がった。
業界トップからも注文
政府への注文は、業界トップからも上がっている。
日本自動車工業会の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は2020年12月の記者会見で、政府の目標について「国家のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」と指摘。「画期的な技術ブレークスルーなしに達成は見通せず、サプライチェーン全体で取り組まなければ国際競争力を失う恐れがある」として、欧米や中国と同様の政策や財政支援を求めた。
また、朝日新聞デジタルによると、鉄鋼最大手の日本製鉄の橋本英二社長は「(政府目標達成の)めどは立っていない」と取材に答えた。二酸化炭素に価格をつけて削減を促す「カーボンプライシング」の導入については、コスト増につながり「(二酸化炭素削減に向けた)研究開発の原資がなくなってしまう」と反対したという。