環境「炎上」でトラウデン直美さんが考えたこと。「矛盾を解決、一緒に考えたい」【インタビュー】

ネット上で「炎上」したモデルのトラウデン直美さんのある提言。その真意やジレンマを聞きました。
トラウデン直美さん
トラウデン直美さん
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「これは、環境に配慮した商品ですか?」と店員に尋ねることで、店側の意識も変わっていく。

 2020年12月、環境問題について話し合う政府の会合で、日頃からSDGsについて発信をしているモデルのトラウデン直美さん(21)が提案した内容だ。

 これが、ネット上で、発言の背景が理解されないまま「炎上」した。

 トラウデンさんは提言の真意について「環境について話すのがタブーだったり、“意識が高い”人のすること、と思われないような空気を作っていきたいという思いでした」と語る。

 トラウデンさんは一連の出来事についてどう感じていたのだろうか。話を聞いた。

環境問題を発信=「意識たかい系」?

トラウデンさんは京都府出身。13歳からファッション雑誌「CanCam」の専属モデルやタレントとして活躍する。現在は慶應大学に在学中で、「CanCam」ではSDGsについての連載も持つなど、環境問題についての発信にも力を入れている。

12月に行われた「2050年カーボンニュートラル・全国フォーラム」では、菅義偉首相も出席する中で、トラウデンさんは若者の間でSDGsという単語の認知は高まっているものの、環境問題について語ると「意識高い系」と言われてしまうような空気があると指摘。

個人間の情報共有や連帯を広げていくことで、SDGsに配慮した企業の取り組みや商品開発を促すこともできると提案した

「2050年カーボンニュートラル・全国フォーラム」の様子。菅義偉首相の奥がトラウデン直美さん=2020年12月17日、首相官邸
「2050年カーボンニュートラル・全国フォーラム」の様子。菅義偉首相の奥がトラウデン直美さん=2020年12月17日、首相官邸
時事通信社

こうした文脈の中で、「これは一例にすぎないのですけれど」と断りながら発言した内容が、次のようなものだった。

 「この商品は環境に配慮していますか」と一言聞くだけで、お店の人は「あ、そうか、お客様は環境に配慮したものを求めているんだ」という意識につながると思います。

この発言の要旨が報じられると、ネット上では否定的な声が多数上がった。

 「自分で調べろ」「店員に余計な負担をかけるな」「自分がモデルで着ている服はどうなんだ」ーー。

極端な声も見られた一方、小売店で店頭に立つ人の雇用問題や働き方の問題に言及した声もあり、SDGsをめぐる議論の難しさが浮き彫りになった。

「私たち世代がなんとかしないとこのままダメになる」

トラウデンさんは発言の意図について「もっと環境について会話できるようになればいいのにな、という思いだった」と語る。

「Twitterなどで批判的なことが言われていたのかもしれませんが、エールもたくさんいただいたんです。環境問題に興味はあっても、何をしていいか分からない、発信するほどではない、という人がたくさんいるんだと思う。何かしなくては、と思っている人がたくさんいるんだと感じられたので、嬉しかったです」

フォーラムで共有されたトラウデン直美さんの資料
フォーラムで共有されたトラウデン直美さんの資料
首相官邸の公式サイト

高校時代に環境をはじめとする社会問題を学んだことがきっかけで、相対的貧困やフードロス、労働問題にも関心があるというトラウデンさん。

SDGsについて「私たち世代がなんとかしないとこのままダメになるという直感、本能的な危機感がある」と話す。

「ただ、環境に配慮すると、服の値段が手が出ないほど高くなったり、仕事を失ってしまう人が出てきてきたり…というように、いろんな矛盾も出てきてしまう。そこを解決するには、たくさんの知恵がある上の世代の方に教えてほしいこともたくさんありますし、人類みんなに関わる問題だと思うので、みんなで協力して一緒に考えていけたらいいなと思います」

グローバルに展開するアパレルチェーンの広報担当者によると、「海外では商品のサプライチェーンに関してお客様からスタッフが質問されることも少なくない」という。

各国のカスタマーセンターから本社にどう回答すべきか相談されることもあるといい、「お客様は環境や社会に配慮した商品を求めているのだとブランドとして意識をすることは必要だと思います」と語る。

2013年9月14日に東京で開催されたTOKYO RUNWAY 2013秋冬コレクションに参加するトラウデン直美さん
2013年9月14日に東京で開催されたTOKYO RUNWAY 2013秋冬コレクションに参加するトラウデン直美さん
Koki Nagahama via Getty Images

日本でも「買わないのも一つの選択肢」と言えるようになった

国連が掲げる国際目標「SDGs」は、一つ一つの目標に異を唱える人は少ないが、現実には様々な問題が複雑に絡み合い、矛盾や対立を生むこともある。そして、トラウデンさんが身を置くファッションの世界も、そんな矛盾の一つだ。

世界の排水の20%と世界の二酸化炭素排出量の10%を生み出していると言われているファッション業界で、「服を見せて買ってもらう」モデルという仕事をしているトラウデンさんは、ジレンマとどう向き合っているのだろうか。

「ジレンマはずっと昔からあります。でも、内側にいるからこそできることもあると思って、発信しています」

ファッション業界も大量に作って大量に廃棄する負のスパイラルから抜け出すため、様々な取り組みを始めている。

トラウデンさんは、最近では「買わないのも一つの選択肢」と呼びかけることもある、という。

「企業が色々考えて良いものを作っているのに、なんとなく購入するのは失礼だと思うんです。『本当にいいと思うものしか買わなくていい』と言ってます。SDGsが少しずつ浸透してきたことで、それが言える環境になってきたのは嬉しいですね。企業も怒らず、むしろ賛同してくれるようになりました」

1月26日のハフポスト日本版の生配信番組「ハフライブ」では、トラウデン直美さんらをゲストに迎え、「ファッションとSDGs」をテーマに、①ビジネスの裏にある環境・人権問題の実態 ②一人ひとりが取り組めることは? などについて話し合います。

ハフライブ
ハフライブ
番組概要:

1月26日(火)夜9時〜

番組はこちらから⇒

Twitter(ハフポスト日本版公式アカウントのトップから)

https://twitter.com/i/broadcasts/1djGXqwVEXjJZ

YouTube 

https://www.youtube.com/watch?v=GR7xxb7R-qQ&feature=youtu.be

(番組は無料です。時間になったら自動的に番組がはじまります)

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