「時代がひっくり返らない限り、SNSを避けて生きていくことはできない。だからこそ、自分がSNSで発信する理由や、その距離のとり方は考え続けたい」
そう語るのは、新しい地図として活動を始めて3年以上が経つ香取慎吾さんだ。
香取さんは、テレビ東京系のドラマ『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(1月25日スタート、毎週月曜日夜10時放送)で、SNSの誹謗中傷から起こる殺人を追う「指殺人対策室」の捜査官を演じる。
タイトルの「アノニマス」とは「匿名」を意味する言葉。インターネット上での誹謗中傷などによって相手を精神的に追い詰めていく「指殺人」(ゆびさつじん)は今、大きな社会問題になっている。
日常的に使っているツールだからこそ、SNSの誹謗中傷は身近な問題だ。香取さん自身もSNSを活用し、日々様々なことを発信している。
香取さんはSNSとどう向き合っているのか? 話を聞いた。
「怖い」と思っていたSNS。使い始めて気づいたこと
SNSを始めたのは、2017年9月新しい地図としての活動をスタートさせた時だった。TwitterにInstagram、YouTube、アメブロ…と様々なメディアを使い分け、何を発信するか、送信ボタンを押すか押さないか、そのチェックもすべて香取さん自身が判断している。
「もともとはSNSをやりたいとは特に思っていませんでした。Twitterとか『炎上』とか、正直あまりいい印象はなく、どちらかといえば『怖いな』と感じていました。
ただ3年前、人生新しい道を歩んでみようかなというタイミングで、新しい地図を始めてSNSも開設しました。いざ始めてみると、僕自身はSNSはあたたかい場所だなという感想を持ちました。ファンの方々とコミュニケーションをとれるし、愛を感じましたね」
これまでとは異なる方法でファンとのコミュニケーションも楽しめたという香取さん。
しかし、時には心ない言葉がとんでくることもある。それについてはどう受け止めているのか?
「やっぱり、中には耳に入れたくないような言葉もあります。その数が少なければプラスにとらえることもできるけれど、数が多いと嫌だなという気持ちは僕にもあります。それはみなさんも、きっと同じですよね。
僕自身のSNSとの距離のとり方としては、嫌な気持ちが積み重なっても、それに飲み込まれないようにすること。ちょっとSNSから離れて、音楽を聞いたり絵を見たり、好きなことをしてリラックスする時間を大切にしています」
「時代がひっくり返らない限り、SNSを避けて生きていくことはできない」。だからこそ、SNSの闇だけではなく、その先の光も描いた作品としてドラマを観てもらえたらーー。『アノニマス』にはそんな思いを込めて、作品と向き合っている。
「どうSNSと付き合うのか。傷つけるような言葉に出会った時どう対応したらいいのか。それを教えてもらう機会がもっと増えたらいいなと思いますね。自分だけでは解決できず、どうしたらいいかわからなくなる時もある。このドラマはフィクションですが、観てくれる方たちのヒントになるようなことが伝えられたらと思っています」
3000万円の寄付。「生きにくさ」感じる人を支援
ネットを介したコミュニケーションは、コロナ禍によってさらに加速している。この日のインタビューもオンラインで行われたが、香取さんは取材中に「まだこのニューノーマルに慣れないんです」と明かした。
この変化をどう感じているのか。
「こういう状況になってあらためて、人と会って握手してハグして、人の目や表情を見て話すことに、自分は情熱を持っていたんだなと思いました。自分はこんなにも人と会って話すのが好きだったんだと気付きました。
今それが制限されることで、もちろん難しさを感じる部分もあります。少し前までは、『あと何カ月がんばれば…』という考えでいたのですが、もっと長期化するんだろうということもようやく理解し始めて。戸惑いつつもどう付き合っていくか、少しずつ前に進めるようになりました」
新型コロナの影響を受け、2020年2月から全国6カ所で開催するはずだった新しい地図のファンミーティングは中止・延期となり、11月に初のオンラインライブ『NAKAMA to MEETING』を行った。
オンラインだからこそできることを、稲垣吾郎さん、草なぎ剛さんとともに3人で考えチャレンジし、ファンとの連帯感をさらに強めることができた。
コロナ禍で新しい地図として始めたのが、日本財団と共同の「LOVE POCKET FUND」(愛のポケット基金)だ。同基金内の「新型コロナプロジェクト」には、新しい地図として3000万円を寄付した。
2019年頃から構想があったという「LOVE POCKET FUND」では、主に「生きにくさ」を抱えている女性や子ども、高齢者・地方創生にかかわる支援を行っていく。
「たとえ小さな力でも、それが集まった時に大きな力を発揮して人を支えることができるんじゃないかと、草なぎくん、稲垣くんと3人で話しました。それで、様々な境遇にある人の中から、特に生きづらさを抱えている人、時として弱い立場になることもある人のためにいち早く支援を届けたいと思いました。
この活動自体、自分が上を向けるきっかけにもなりました。僕もいつも小さな力に助けられて生きてきた。自分の力だけで成し遂げられたことって数えるほどしかなくて、常に誰かが近くにいて支えてくれたんだと、あらためて思い返しました」
年下な「慎吾ちゃん」のイメージから、40代の香取慎吾へ
『アノニマス』は5年ぶりの民放ドラマ出演で、1月31日に44歳の誕生日を迎える香取さんにとって、40代になって初めてのドラマ出演でもある。
主演として作品の座長を務めることになった。共演者にはプライベートでも親交の深い山本耕史さんや、注目の若手俳優である関水渚さんや清水尋也さんらが揃った。
「5年前に出たドラマは30代でしたが、今は40代になった。僕って、年下な『慎吾ちゃん』のイメージが強いと思うんです。でも、もう年齢的にも上になってきて、今回は若い子たちも多い。彼らと、40代になった香取慎吾の掛け合いはどうなるんだろうと、自分に期待してワクワクしています」
芝居に音楽、アートなど、多方面でその才能を発揮している香取さんだが、自身では「お芝居が苦手で、仕事の中で一番難しい」と感じているそうだ。
「たとえば、絵は本当に自由でルールもゴールもなく、自分で始めて自分で終わりを決められる。絵を描いてる時は一人なので、『この色でいいの?』『えー違くない?』『いや、いいんだよ!』とか、自分との会話が面白いですね。それを仕事としてできているのは、まあ、最高ですよね(笑)。
一方でお芝居はチームでやるものだから緊張感もあって、台本や演出など、言われた通りにやるべきこともある表現です。監督や共演の方が、自分の想像をはるかに超えてきたり、まったく違う方向だったりすることが醍醐味ですね。スムーズにいくことなんかないけれど、納得できる作品にするためには、ぶつかることも必要だと思っています。観てもらう人に伝えたい何かがあって、それをみんなで共有しながら一緒に進めるのが楽しいです」
制作チームから熱い思いを受け取り、出演オファーに応えた香取さん。5年ぶりにドラマの現場に戻ってきて、チームで作る楽しさと感謝の思いをあらためて感じたという。
「日々新しい方たちと出会ってお仕事をしています。そのプロフェッショナルな仕事に影響を受けることもあって、今回もそういう現場になるのではないでしょうか。
今、ドラマの撮影現場も以前とは違ってきていますが、そんな状況であらためて、すべての場所のすべての人たちに支えられて生きているんだなと実感しています」
(取材・文=若田悠希/ハフポスト日本版、撮影=西田香織/ヘアメイク=石崎達也/スタイリスト=細見佳代)
【番組情報】
『アノニマス ~警視庁“指殺人”対策室~』1月25日(月)夜10時スタート
主演:香取慎吾 関水 渚 MEGUMI 清水尋也 / 山本耕史 シム・ウンギョン(特別出演) 勝村政信