新型コロナウイルスによる感染者・死者が急増している英国。
最新の状況をレポートしていきたい。①(1月9日)
英国の新型コロナによる感染者、死者、検査数は政府が毎日、情報を更新している。
1月8日付の情報によると、1日当たりの新規感染者は6万8053人。死者は1325人。いずれもこれまでで最多である(英国の人口は約6700万人で、日本の半分。単純計算すれば、日本でいえば約12万人が新規感染に相当)。累計死者数は約7万9000人。
英国は現在、ほぼ全域でロックダウン(自宅に留まることが原則)体制となっている。イングランド地方(英国の人口の90%が住む)では、昨年3月、11月に続き、今回が3度目のロックダウンだ。
ロックダウンのきっかけは、変異種ウイルスの急増による、医療崩壊を防ぐためだった。
どれほど増えているのかというと、昨年12月16日時点では10万人当たり287人が感染していたが、2週間後の30日では487人となっており、70%増加していた。
そして、イングランド地方に限ると、入院患者を除外して、地域内で感染している人の数(国家統計局による推計)は50人に1人、ロンドンでは30人に1人。
公衆衛生庁(パブリック・ヘルス・イングランド)の最新の調べでは、ロンドンでは10万人当たり1000人を超えているという。
以下のグラフは、イングランド地方の各地域で、変異種のコロナウイルスによる感染とほかのコロナウイルスによる感染の場合にどれだけ差があったかを示したものだ。
青線が変異種によるもので、どこの地域でも急増していることが分かる。特に大きな伸びを示したのが、右端の一番下にある、ロンドンだ。
1月4日、ジョンソン英首相がテレビ会見でロックダウンが始まることを国民に伝えた。小中学校の新学期は4日に始まっていたが、1日のみの通学で、5日からは閉鎖状態となった。今年夏に予定されていた期末試験も中止が後に決まった。
英国では連日、5万人から6万人の感染者が新規に出ており、医療体制を圧迫している。元々、冬になると病院が込み合い、毎年「危機」と言われてきたが、今回はこれに輪をかけた格好となった。
新型コロナの最初の波は昨年春で、英国が全国的なロックダウンを開始したのは3月末。1日当たりの感染者数や入院者数は4月がピークとなっていた。しかし、変異種の拡大が早く、現時点ではこのピーク時の数を超えている。
英国内のコロナ感染による入院者は約3万人。このなかで、1万人はクリスマス以降から現在まで、つまり約10日の間に生じている(国民医療サービス=NHS=担当者、1月5日の会見で)。あっという間に拡大していることが分かる。
8日、英国の首席医務官クリス・ウイッティ氏が動画でメッセージを出した。変異種が急速に拡大し、人の命が危なくなっていること、「家にいてください」、「どうしても外出しなければならないときは、(帰宅時には)手を洗うこと、外出時には顔を覆うこと、人とは距離を取ることを忘れないでください」と呼びかけた。
医療体制にも大きな負担がかかる。
ロンドンのカーン市長は感染が制御不能になったとして、「重大インシデント」宣言を発している。
ロンドン市長が重大インシデント宣言 コロナ感染「制御不能」 (ニューズウイーク・ジャパンの掲載記事、1月9日付)
BBCニュースに対し、西部ウェールズ地方の救急サービスで働くシニア・ナース、セーラ・フォガシー氏は、9日時点で病院の1つの外には13台の救急車が並んでいるが、病院内には収容できるスペースがないという。
中部バーミンガムの公衆衛生の担当幹部ジャスティン・バーニー氏は、同日朝のBBCラジオ4の番組に出演し、集中治療室で働く看護師の数が不足していることへの不安を伝えた。今後は事態が改善する前に、悪化するだろうという見通しを語った。
政府の国民へのメッセージは「自分が感染していると想定して、行動しよう」である。
(2021年01月09日の小林恭子の英国メディア・ウオッチ掲載記事「【新型コロナ】英国 最新レポート ① 「自分が感染しているとして、行動しよう」」より転載。)