破水後、かかりつけの病院で陣痛促進剤を投与すると、女性の体調は急変。総合病院に搬送された。
緊急手術中に、子宮破裂による大量出血も見つかり、約4700グラムの血液を輸血された。
「献血者の方々に、感謝しても感謝しきれない」
コロナ禍で、都市部を中心に献血者数の減少傾向が続いている。2回目となる緊急事態宣言の影響も懸念される。
過去に出産した際、輸血で自身と子どもの命を救われた女性は、「一人でも多くの人が献血をしてくれたら、救われる家族もいます」と話す。
「長く生きられないかもしれない」
女性が第二子となる長女を出産したのは2008年。長男を授かってから9年目で、念願の妊娠だった。
輸血を伴う出産の後、女性の体は順調に回復した。一方で娘は、新生児特定集中治療室(NICU)で呼吸器につながれていた。
娘の詳しい状態を説明されたのは、出産から数日後。
医師は女性に、娘が低酸素脳症で生まれ、脳死状態だと告げた。「長く生きられないかもしれない」と伝えられたが、寝たきりの状態で何年も生き続けることもあるとも言われた。
医療従事者ではない自分にこの先、娘のケアができるのか。介助に失敗したら命を奪ってしまうかもしれない。息子はまだ小学生。お金はどう工面するのか...。
「奇跡が起こらないか」と想像しては涙を流す日々。頭の中はぐちゃぐちゃだった。
献血に向かった夫「生かしてくれたお礼を」
「生きていて良かった」
女性がそう思えるようになったのは、産後7か月ほどの頃。娘が退院し、自宅で一緒に暮らすようになってからだ。
その頃には、看護師や介護士らのサポートを受けながら、医療的ケアの練習を重ねて自信がついていた。
夫や息子とも「協力し合って頑張ろう」と話し合えた。
在宅ケアを支えてくれる地域の専門職の人たちや、病院でできた友人、一番苦しい時に出会ったネットの仲間にも助けられた。
娘が生まれてから、夫は「生かしてくれた献血者への感謝とお礼がしたい。必要としている人のために、少しでも力になれるなら」と、献血ブースを見かけたら進んで協力するようになった。
「夫が献血に行くようになって、自分のことしか考えられてなかったことに気づきました。それからは、献血者の方々に感謝しても感謝しきれないと思うようになりました」
長女は3年前、9歳で亡くなった。「長く生きられないかもしれない」という医師の言葉に反し、娘はみるみる成長していった。身長や髪の毛も伸び、ワンピースドレスを着せると表情が華やいだように見えた。
「不思議なことに、脳死ってなんだろうと思うほどに本人の意思を感じるようになったんです」
葬儀では、頑張って生き抜いた娘をみんなで拍手で見送ったという。
日赤「予断を許さない状況」
コロナの感染拡大の影響で、都市部を中心に献血者数の減少傾向が続いている。
東京都赤十字血液センターの公式サイトによると、2020年4〜11月までで献血量は必要人数を約3万2000人下回った。
日本赤十字社が公開している速報値によると、全国では緊急事態宣言が出た4、5月に献血者数が前年の1.8〜2.7%減った。都市部は特に減少幅が大きく、東京は前年比で14.3〜17.6%、大阪府は約10%下回った。
日赤はハフポスト日本版の取材にメールで回答。「特に都市部において、企業や団体の集団献血の中止が相次いだことは、安定的な献血血液の確保に多大な影響をもたらしている」という。
1月7日には、東京など4都県で2回目となる緊急事態宣言が発令され、献血事業への影響も懸念される。日赤は感染者数の全国的な増加について、「外出を控える動きが広まるなど、必要な血液の確保は予断を許さない状況」と危機感を募らせている。
感染対策を理由に、新型コロナウイルスの感染が確認された人や、過去に「陽性」と判明した人などは献血することができない。
さらに、日赤は、女性のように過去に輸血を受けた人も献血者になることができないとしている。
女性は「当事者の私が協力できないのは、申し訳ない気持ちです」と明かす。
「一人でも多くの人が献血をしてくれたら、救われる家族もいます。それが自分になるかもしれません。輸血が遠くの話ではなく、身近なものなんだと知ってほしいです」
<献血の予約方法>
日本赤十字社は、感染防止対策の一環で、献血の事前予約を呼びかけている。
【WEBサイトからの予約】※会員登録が必要
・献血 Web会員サービスラブラッド
【電話予約】
・献血ルームでの予約は当該献血ルームに連絡する
・献血バス会場での予約は各都道府県の血液センターに連絡する
(國崎万智@machiruda0702・ハフポスト日本版)