世界で接種が始まっている新型コロナワクチン。日本でも、菅義偉首相が2月下旬までの接種開始を目指すと表明している。
すでに始まっている国では、重症化しやすい高齢者を優先しているが、インドネシアは異なるアプローチをとる。医療従事者らに次いで、18歳〜59歳の成人から接種を始めるという。
なぜか。ジャカルタポストやロイター通信が、背景を伝えている。
ジャカルタポストによると、インドネシアでは、中国のバイオ医薬企業、科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)社製の新型コロナウイルスワクチン「コロナバック」の大規模接種を予定している。
ワクチン接種に向けた後期段階の治験は、18歳〜59歳を対象にインドネシア国内で実施されたという。
そのためインドネシア政府は、高齢者が接種した場合の有用性を示すデータを持ち合わせていないと、ロイター通信は伝えている。
ワクチン接種は通常、医療従事者や必要不可欠な仕事をしている人たちに続いて、まず高齢者を優先することが一般的と言われている。
アメリカやイギリスといった欧米諸国は、全ての年代に有効とされる米ファイザー製や英アストラゼネカ製のワクチンを早期に確保し、高齢者から接種が始まっている。
一方インドネシアは、ワクチンの初期確保がシノバック社製のみで、重症化しやすい高齢者への接種が後になる見通しだ。ロイター通信によると、アストラゼネカ製のワクチンが届くのは、4月以降の見通しという。
インドネシア科学院のWien Kusharyoto氏は、ジャカルタポストに「国内の高齢者の数はとても多く、家庭内クラスターを心配している。イギリスやアメリカのように高齢者から優先的に接種するべきだ」と政府の対応に警鐘を鳴らす。
一方、オーストラリア国立大学の感染症学のピーター・コリンノン教授はロイター通信に対して、インドネシア方式が感染拡大を抑える可能性もあると言及している。
「インドネシアが異なるやり方をするのには価値がある。このアプローチが、アメリカやヨーロッパよりも劇的な効果があるかどうかを示すことになるからだ。答えは誰にも分からない」
ジョンホプキンズ大学によると、1月5日時点でインドネシアの感染者数は約77万2100人、死者は約3万8600人。