2021年夏に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式をめぐり、狂言師の野村萬斎さんが率いる総合演出チームが解散することが12月23日、発表された。野村さんらが同日午前、会見を開いた。
野村さんは、「企画に携わってくださったクリエーティブ・ディレクターや全スタッフには断腸の思いではありますけれど、感謝を申し上げたい」と述べた。
何が起きたのか
野村萬斎さんは、2018年7月31日に東京2020大会開会式・閉会式の総合統括するチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。
野村さんを筆頭に、オリンピックは映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズで知られる映画監督の山崎貴さん、パラリンピックはソフトバンクの白戸家シリーズCMなどを手がけたクリエーティブディレクターの佐々木宏さんが演出を統括する予定だった。
さらに、演出チームとして以下の4人が名を連ねていた。
椎名林檎さん 歌手。リオ五輪閉会式での「引き継ぎ式」で演出を担当した。
川村元気さん 映画プロデューサー、クリエーティブ・ディレクター。君の名は。』などを手がけた。
栗栖良依さん クリエーティブ・ディレクター。パラスポーツ、芸術などの演出を手がける。
MIKIKOさん 振付家。星野源さんの大ヒット曲「恋」のダンスなどで知られる。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、演出内容を根本的に見直し、再構築する必要が出てきた。
大会組織委員界によると、「新たな体制構築が必要」という結論に至り、総合演出チームを解散することが決まったという。
総合演出統括の後任には、佐々木宏さんが就任する。野村さんは今後、組織委員会のアドバイザーとして大会を支援するという。
野村萬斎さん「断腸の思い」
22日に演出チームの解散が報じられると、ネット上では驚きの声が上がった。
23日午前には、大会組織委員会が会見を開き、野村萬斎さんや佐々木宏さんが登壇。演出チームの体制変更が正式に伝えられた。
野村さんは、「迅速な判断が求められるという時に、機動力、効率を上げることが最優先なのではないかということに同意しました」と説明。
「企画に携わってくださったクリエーティブ・ディレクターや全スタッフには断腸の思いではありますけれど、感謝を申し上げたい。慰労してあげたいと思います」と感謝を述べた。
その上で、 「クリエイティブチームが積み上げてきたもの、日本から世界に発信するということを佐々木さんが受け取って発揮してくださると思う」とし、「佐々木さんの差配でやっていただくことがこの局面を乗り越えることかなと思っております」と語った。
佐々木さん「やるべきではないという声があるのは存じ上げている」
佐々木さんは、新型コロナの感染拡大を受け、開会式・閉会式をゼロから見直す必要があったと説明。オリンピックとパラリンピックを同時にできないか、などの相談もしていたという。
「(東京五輪を)やるべきではないという声があるのは存じ上げています」とも述べ、「私自身も非常に葛藤がございますが、誰かがやらなければいけないという気持ちでいます」と意気込みを語った。
新たな開会式・閉会式は、簡素化する方針という。大会開催まで7カ月となっているが、新たな演出企画については新体制が発足したばかりで、「正直に申し上げて、進捗状況としてはそれほど進んでいない」とも述べた。
佐々木さんは、「できるだけ努力してここまで頑張ったぞということを世界に示すいいチャンスととらえ続けたい」と表明。「このオリンピックパラリンピックを見て、最後に一言、皆さんに『やってよかった、やらないよりはやってよかった』と思ってもらえるように、そこにどうやってたどり着けるかということを考えたい」と述べた。
東京2020開会式・閉会式をめぐるこれまでの経緯
2017年12月 オリンピック・パラリンピックの開・閉会式の「4式典総合プランニングチーム」が発足。野村萬斎さん、椎名林檎さんなど8人が選出されたことが発表される。
2018年7月 プラニングチームの8人が総合演出チームのメンバーに。総合統括に野村萬斎さんが就任した。
2020年1月 チームメンバーの菅野薫さんがパワハラ問題を受け辞任。
2020年12月 演出チームの解散が決定。