冬至の日の風習「ゆず湯」は、各地の銭湯でもお客さんを呼び込む行事の一つとして広がっている。
こうした中、湯船に浮かべていた柚子の実を一気に潰されたという銭湯から、「本当に悲しい。マナーを守って」と悲痛な叫びが上がっている。
「天然温泉 清児(せちご)の湯」(大阪府)は冬至の日の12月20日、Twitterで写真と共に次のように投稿したところ、大きな反響が寄せられた。
<柚子を投入して1時間足らずで、男性側はこの有様です
スタッフが潰された果肉と種を網とホースで救い出す作業に追われています
こういうことが続くとせっかくのイベントができなくなってしまいます
お願いだから潰さないで>
何があった?
店長の伊達喜彦さんによると、店では毎年冬至の日に柚子の実を銭湯に浮かべるイベントを行なっている。今年は冬至の日の正午から、男湯・女湯の両方にそれぞれ30〜40個ほどの実を入れていた。
柚子を浮かべた1時間後、男湯から上がった客から、柚子の実が潰されていることを伝えられた。社員が確認したところ、半数ほどが潰れていたという。
「最初は自然に崩れたのかもとも思いましたが、同じ柚子を入れていた女湯の実は無傷でした。潰れている柚子をよく見ると、明らかに意図的に割っているのが分かりました」(伊達さん)
初めてではなかった
店は開業から20年以上たつ。柚子の実が潰されることは、過去にもあったという。
「以前にもこういうことがあったので、一時期は止むを得ず柚子をネットに入れて、潰されないようにしたこともありました。でも『これでは楽しめない』というお客さんからの声があり、店としても風情に欠けると考えたので、数年前からはネットに入れず、そのまま浮かべるようにしていました。お客さんのモラルに任せていたのですが、今回はひどくやられてしまいました」
店は、浴場内に「機械故障の原因になりますので(実を)剥かないでくださいね」との注意喚起のポップを掲示していた。実が潰されたことで、種が浴槽の床に散らばり、お湯も汚れてしまったため、スタッフは清掃作業に追われた。
家の風呂とは違う
柚子を潰す、という行為一つで、店の営業に大きな影響を与えかねない。
伊達さんによると、「柚子の種で配管がつまったり、機械のポンプが壊れたりする可能性があります」という。
「『自宅では潰して楽しむのが当たり前』という声もいただきますが、公衆浴場と自宅のお風呂ではシステムが違うということを理解してほしいです」
「実そのものを触って、香りや風情を楽しんでもらいたいという思いがあります。いたずら心でしたのか動機は分かりませんが、その思いを蔑ろにされたような気持ちがします。『なんでこんなことをするんやろうな』と本当に悲しく、残念です」
ただ、伊達さんはゆず湯のイベントを来年以降中止することは今のところ考えていないという。
「マナーを守ってもらえたら毎年実現できるイベントなのです。これからも楽しんでもらいたいので、どうかご理解いただきたいです」
(國崎万智@machiruda0702・ハフポスト日本版)