5歳から性教育の行われる国・スウェーデンで生まれ育ったLiLiCoさん。これまで、さまざまなメディアで性や生理について発言してきました。
2020年6月からは、生理にまつわる知識向上と相互理解を促進するソフィの「#NoBagForMe プロジェクト」のメンバーとしても活動しています。
世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、LiLiCoさんがホンネで語り尽くす本連載。今回のテーマは「女性のカラダ」です。生理から性教育、妊娠、妊活、男性不妊まで、日本で感じた変化も交えて話してくれました。
自分の“お股”は自分のもの
最近、日本でも生理に関するリアルな声が聞けるようになってきました。ただ同時に、ショックを受けることも増えたんです。
例えば、30歳ぐらいの女性から聞いた「母親にすすめられた生理用品を初潮から使い続けてきて、別の物を試したことがない」というセリフ。合っていればいいけど、よれたり、漏れたり、フィット感に満足してないという言葉が続いたので.......だったら改善しましょう!
自分のお股は自分のもの。他の人とは、経血の量も、膣の形も、痛みの感じやすさも、カラダの不調の起こり方も違います。いろいろ試さないと、自分に合うものには出合えません。
(生理は)人生で約40年も付き合っていくものなんだから、生理用品についての知識をつけて、自分でいろいろな製品を試してみてほしい。
日本の生理用品は、とても優秀。アプリケーターがついているタンポン、羽根つきでズレたり漏れたりしないナプキン、膣の入り口に挟んで使うもの、ショーツタイプのもの……。
私は海外で、日本より衛生的で性能のいい生理用品に出合ったことがありません。来日した30年前から、日本は生理用品先進国だと感じてきました。
私も参加している「#NoBagForMe」のYouTubeも、ぜひ役立ててほしいな。専門家の知識やさまざまな世代の意見を発信していますから。
「生理のCMは食欲がなくなる」
生理に対する男性の意識も少しずつ変わってきていると感じます。自然現象のひとつとしてサラッと口に出しているのを見る機会が増えていますよね。
一方で、悲しい現実もある。先日聞いたのは、生理用品のCMに対して「食欲がなくなるから、ごはんどきに放送するのはやめてほしい」という男性からのクレームがあること。
その人は自分がどこからやって来たのか知ってるのかな? 生理は、妊娠のための準備があるからこそ起こるもの。今はもう「生理は穢れ」という時代じゃないんですよ。
海外では、生理用品のCMには青い液体ではなく赤い液体が使われる国も増えています。生理は自然なものだと説明し、「痛みやストレスに絶えなくていい」とメッセージを送るCMもあります。
″月一”と表現することが多いせいか、生理が月に1日きりだと思っていた日本人男性もいるそうです。親やきょうだい、親しい友だち、恋人……その中には女性がいたはず。それなのに、生理が一週間あるとわからないことは、日本という社会で生理が、女性の生理が隠され、軽んじられてきた証拠ですよね。
スウェーデンの若きカリスマYouTuberは堂々と生理を語る
今、ビアンカ・イングロッソというスウェーデンのYouTuberにハマッているんです。
イングロッソ家といえば、スウェーデンでは有名な芸能一家。25歳のビアンカは、若い子たちのカリスマです。人口約900万人のスウェーデンで30~40万回の再生数を誇り、彼女が紹介した洋服やコスメは即完売。彼女の発言がすぐにニュースになるほどの影響力を持っています。
ビアンカは、YouTubeで日常的に女性のカラダについて口にするんですよ。自分の経験を通して、正しい知識を伝えようとしているんです。
例えば、メイクを紹介する動画のなかで、「ここにニキビがあるけど、いま生理中だからしょうがないよね」なんていうのは日常茶飯事。
アンバサダーをしているメーカーの生理用品を紹介するときは、自分のグラスに水を入れて、他社製品と性能を比較していました。「将来はお母さんになりたいから、生理や自分の子宮について気を遣っておきたいの」と話しながら。
「LETS TALK VAGINA(膣について話そう)」というタイトルの動画では、性の正しい知識について発信しています。驚いたのは、「正直言えば、私だって子どもをおろしたことがある。みんなには知識を持っていてほしい」と発言したこと。
人気のインフルエンサーが女性のカラダや性について語る姿は、彼女のファンである同世代やティーンエイジャーたちにも、いい影響があるはず。
彼女を見ていると、日本にも彼女のような若い世代のオピニオンリーダーがいるといいなと強く思います。
性をオープンに語る国に
日本では、性がタブー視されているように思います。
だけど、こんなにラブホテルがある国を私は知りません。ラブホテルは、セックスするための場所でしょう?
日本は性をもっとオープンに語る国になってほしい。大好きな国だから、根本的なことに向き合ってほしいんです。
もっとも変えてほしいのは、性教育。
今の性教育は、学校や先生によって、どこまでどんなふうに教えるかが違っているなど、性の知識がきちんと子どもに広まっていないと聞きます。特にセックスや避妊については、触れることはほぼないそうですね。
でも、教えなかった結果、コロナ禍で中高生の妊娠の相談が増えたのではないでしょうか。 彼ら、彼女たちがセックスのリスクや避妊の仕方を学んでいたら、未来は違ったと思います。コンドームは、コンビニでも売っている日用品なんだから。
中高生が性について興味があるのは、自然なこと。それならば、小さいときからお互いの性について、セックスについて、避妊について、少しずつ学んでいかないと。
例えば、性について学ぶときに、男の子には生理のこと、女の子たちには精通のことについて、「どう思う?」って聞いてみてもいいですよね。
きっと「気持ち悪い」「怖い」という返答もあると思います。そうしたら、「なぜ? あなたが産まれたのは、生理や精通があるからだよ」「あなたが将来、愛するパートナーも、生理や精通があるんだよ」って教えてあげてほしいな。
同時に、ゲイやレズビアンなど性的マイノリティの話をするのもいいと思います。
「もしかしたら、あなたたちの中に同性を素敵だなと思う人がいるかもしれない。それは変なことじゃない。もし誰かが何かを言ってきても、その人が間違っている」とかね。
かっこいい先生や先輩の一言で、人生は変わります。勇気を持って取り組んでほしいですね。
思い込みは、生まれ育った環境で作られる
男性不妊が知られるようになってきていますが、日本ではまだまだ妊娠できない原因は女性側だけにあると勘違いされがち。
不妊治療をしていた知人の女性が、夫婦で夫の実家へ行き、夫の無精子症を報告したら、義理のお母さんに「そんなわけはない。全部あなたのせい」と言われたそうです。
義母は、自分はそんな息子を産んでいないと思いたいのでしょう。でも、私の知人だけでなくその夫も傷ついたはず。こういう不幸も性への知識不足からきていると思います。
思い込みは、生まれ育った環境で作られるんです。逆に言えば、思い込みは環境で作られたものでしかないということ。正しく性を理解してオープンに話せる環境があれば、間違った誤解が生まれることは防げます。
次の世代のためにも、そろそろ次のステップを踏み出しませんか?
(取材・文:有馬ゆえ 写真:川しまゆうこ 編集:笹川かおり)