「ジル・バイデンに『博士』いらない」と主張した記事に批判殺到。「性差別的で恥ずべきこと」陣営ら抗議

ウォール・ストリート・ジャーナルに、次期ファーストレディのジル氏の「博士」の称号は「詐欺」だと主張する記事が掲載された。
大統領選でペンシルバニア州で演説するジル・バイデン氏(2020年11月2日撮影)
大統領選でペンシルバニア州で演説するジル・バイデン氏(2020年11月2日撮影)
JIM WATSON via Getty Images

アメリカの老舗経済系メディアの「ウォール・ストリート・ジャーナル」(以下WSJ)に掲載された、ジル・バイデン氏の「博士」という表記を「不必要」とした記事をめぐり、騒動が起きている。

ジル・バイデン陣営は、「性差別的で恥ずべきこと」とし、記事を削除し謝罪を求めるなど激しく抗議している。

教育分野の博士号を持つジル氏

次期大統領となるジョー・バイデン氏の妻であるジル・バイデン氏は、教育者のキャリアを築いてきた。

2007年、55歳のときにデラウェア大学で教育分野の博士号を取得。3人の子どもを育てながら、15年間働いたあとのことだった。

報道機関では「Dr.」という表記を医師を表現する時だけに使うこともあるが、ジル氏のように、その功績を強調する時に称号として使うことは、本質的に何の問題もない。

ホワイトハウスの公式サイトで、ジル氏は「Dr. Jill Biden(ジル・バイデン博士)」と表記されている。ジル氏は、「ファーストレディになっても教え続けたい」と明言している。

「Dr.」の表記は『詐欺』と主張

同紙に寄稿したエッセイストのジョゼフ・エプスタイン氏は、12月11日に掲載した記事の中で、「Dr.」(博士)の表記は不必要だと主張した。

記事は、「Is There a Doctor in the White House? Not if You Need an M.D.」という見出しがつけられ、「ファーストレディ、バイデン夫人、ジル、おまえ(kiddo)」という一文から始まる。

続けて、「私から一つアドバイスがあります。それは、些細なことですが、重要な問題です」とした上で、「あなたの名前の前にある『Dr.』という表記は落とすべきなのではないですか?『Dr.ジル・バイデン 』というのは、面白くもなく、詐欺だと思います」とつづった。

エプスタイン氏は、記事の中で、自身の大学講師としての経歴を語り、また、アメリカのコメディアンであるスティーヴン・コルベア氏など著名人等に与えられることのある「名誉学位」に反対する論を繰り広げた。

しかし事実としては、ジル氏は10年以上にわたる研究の上で学位を取得しており、「名誉称号」として与えられたわけではない。

また、エプスタイン氏はジル氏に対し、「ジル博士であることの小さなスリルを忘れて、次の4年間、ファーストレディのジル・バイデンとして世界一の公営住宅(ホワイトハウス)に住むスリルで我慢してください」とも記した。

「性差別的で恥ずべきこと」と抗議

ジル・バイデン氏の代理人であるマイケル・ラローザ氏はTwitterで、当記事の編集担当であるWSJのジェームズ・タラント氏にメンションをとばし抗議した。

.@jamestaranto, you and the @WSJ should be embarrassed to print the disgusting and sexist attack on @DrBiden running on the @WSJopinion page. If you had any respect for women at all you would remove this repugnant display of chauvinism from your paper and apologize to her.

— Michael LaRosa (@MichaelLaRosaDC) December 12, 2020

「あなた方は、WSJのオピニオンページで、ジル・バイデンに対するうんざりするような性差別的な攻撃を掲載したことを恥じるべきです。

女性に敬意を持っているならば、あなたのメディアからこの排外主義な記事を削除し、彼女に謝罪すべきです」

また、ジル氏の広報部長であるエリザベス・アレクサンダー氏も、Twitterで簡潔に批判した。

「性差別的で恥ずべきことだ。WSJ、改善してください」

Sexist and shameful.

Be better @wsj.https://t.co/GYksH0JDiP

— Elizabeth Alexander (@EAlexander332) December 12, 2020

陣営以外にも、俳優のデブラ・メッシングさんなどの著名人や議員、一般ユーザーなども、TwitterでWSJの記事を批判。SNSは「doctor」という言葉で溢れ、多くの人がこの事態に反応している。

カマラ・ハリス次期副大統領の夫であるダグ・エムホフ氏も、ジル氏への支援を表明した。

「バイデン博士は勤勉に、かつ粘り強く学び、学位を取得しました。彼女は、私や彼女の学生、そしてこの国の人々に大きなインスピレーションを与えています。男性について、このように書かれることは決してないでしょう」

Dr. Biden earned her degrees through hard work and pure grit. She is an inspiration to me, to her students, and to Americans across this country. This story would never have been written about a man. pic.twitter.com/mverJiOsxC

— Doug Emhoff (@DouglasEmhoff) December 12, 2020

この記事はハフポストUS版の記事を翻訳・編集しています。

2020年に幕を閉じた安倍政権の看板の一つは「女性活躍」だった。しかし現在の菅義偉新内閣20人のうち女性はわずか2人。これは国会の男女比そのままだ。2021年には、菅政権下で初めての衆院選挙が行われる見通しだ。候補者の人数を男女均等にする努力を政党に義務付ける「候補者男女均等法」制定から初めての総選挙。政治の現場のジェンダーギャップは、どうすれば埋めることができるのだろうか。

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