『モンスターハンター』中国で映画上映が中止⇒「人種差別」と批判のシーン、監督と俳優が謝罪

日本発の人気ゲームが、ミラ・ジョヴォヴィッチさん主演でハリウッドで実写化。セリフの何が問題になったのか解説する。
映画『モンスターハンター』
映画『モンスターハンター』
(c) Constantin Film Verleih GmbH

カプコンのゲームシリーズを、ハリウッドで映画化した『モンスターハンター』をめぐり、中国で一部のシーンに人種差別だと批判が噴出。12月4日に公開された後、わずか1日で上映中止となった。

該当シーンは削除され、12月8日、監督と出演者が謝罪し、意図を説明した。

作品の何が中国で問題になったのか。時系列順に紹介する。

アジア差別だと批判が噴出

本作は、『バイオハザード』シリーズで知られるポール・W・S・アンダーソンさんが監督、ミラ・ジョヴォヴィッチさんが主演を務めた映画。

ハフポストUS版によると、問題になったのは、2人の兵士が車で砂漠を横断するシーン。そのうちの1人を、ラッパーのMCジンとしても人気を誇る中国系アメリカ人俳優のジン・オウヤンさんが演じている。

2人は、「このニーズ(ひざ)は何?」「チャイニーズ!」と冗談を交わす。

この会話が、アジア系の子どもを侮辱する差別的な表現が使われたあそび歌「中国人、日本人、汚い膝、これを見て(Chinese, Japanese, dirty knees, Look at these)」を想起させるとし、SNSで批判が噴出した。

Weiboでは、「中国を侮辱している」「露骨な人種差別」などの投稿が相次いだ。この事態を受けて、中国での上映が中止となった。

Deadlineによると、制作会社は、コンスタンティン・フィルム(ドイツ)、インパクト・ピクチャーズ(カナダ)、テンセント・ピクチャーズ(中国)、東宝(日本)などが共同で担当している。

該当シーンを削除し、謝罪

批判が殺到し、中国で上映が中止になると、コンスタンティン・フィルムは6日に謝罪コメントを発表。Deadlineによると、「差別や侮辱の意図はまったくなかった」とし、「中国の観客の意見に耳を傾け、不注意にも誤解を引き起こしたセリフを削除した」と説明した。

セリフの意図は?「誇りを感じてもらえると…」

ポール・W・S・アンダーソン監督と、俳優のミラ・ジョヴォヴィッチさん(2018年4月4日撮影)
ポール・W・S・アンダーソン監督と、俳優のミラ・ジョヴォヴィッチさん(2018年4月4日撮影)
Steven Ferdman via Getty Images

この騒動を受け、アンダーソン監督や主演のミラ・ジョヴォヴィッチさん、そして該当シーンを演じたジン・オウヤンさんもメディアやSNSを通して謝罪し、意図を説明した。

アンダーソン監督は8日、Deadlineを通してコメントを発表。

「一部の中国の観客を不快にさせたことを悲しく思っています。該当のセリフとその翻訳が招いた観客の不安や不快感をお詫びします」と謝罪。

本作を「楽しいエンターテインメントとして作った」とし、「意図していない怒りを引き起こしてしまい、残念に感じています」と心境を明かした。

該当のセリフは削除するとし、「差別的で侮辱的なメッセージを送ろうとしたわけでは決してなく、それどころか、この映画で伝えたかったことは、団結なのです」とコメントした。

また、オウヤンさんは8日に自身のインスタグラムで動画を公開。「私のキャリアのためではなく、私が何よりも大切にする自身のルーツのためにこの状況に対処しようと考えた」などの言葉を添え、投稿した。

動画の中で、オウヤンさんは「彼(※編集部注:演じた兵士)が誇りを持って自分は中国人兵士だと宣言する、というのが演じた時の思いでした」「(差別的表現に)関わるものは何もありません。私が悲しいのは、このシーンによって、観客から『中国の兵士がいる』と思ってもらえたらと感じていたから」と該当シーンに込めた思いを明かした。「本当に悲しいと思っているけれど、同時に、誤解した人、侮辱されたと感じる人には心から謝罪します」と続けた。

ミラ・ジョヴォヴィッチさん(2019年5月24日撮影)
ミラ・ジョヴォヴィッチさん(2019年5月24日撮影)
Gisela Schober via Getty Images

またジョヴォヴィッチさんも、オウヤンさんの投稿に返信する形でコメント。

ジョヴォヴィッチさんは「あなたが謝らなくてはいけないと感じたことが悲しい」とし、オウヤンさんが、「中国系であることに誇りを持ち、声をあげてきた人だ」と称えた。

批判があがったセリフに関しては、「誇りを感じてもらうためのもので、侮辱する意図はなかった」とした上で、「歴史について知るべきだった。その責任は私たちにある」との受け止めを語った。

オウヤンさんに対しては、「今回の楽しくてワクワクするような映画で一緒に働けて素晴らしかった。この出来事であなたが落ち込まないよう祈ります。この騒動を引き起こしたのは、企業として注意義務・努力を怠り、差別的な言葉に気づかなかった私たちのせい。私たちはみな、あなたを愛しています」とメッセージを送った。

12月9日時点で、本作はアメリカでは12月25日、日本では2021年3月26日より公開を予定している。中国での今後の上映については、発表されていない。

注目記事