冬の風物詩とも言えるクリスマスツリー。
例年と異なり、今年はアメリカやヨーロッパ、シンガポールなど世界各地で売り切れが続出している。
理由は主に2つ。どちらも新型コロナの影響だという。
一体なぜか。
需要が増えた背景
一つ目は、単純に需要が増えたからだ。
New York Timesによると、アパートメントに住む男性とルームメイトは、悲劇的だったコロナ禍の1年の締めくくりに、いつもとは違うことをしたいと、初めて本物のクリスマスツリーを購入したという。
「ここ最近は外出もままならないですが、気持ちを前に保とうとしています」と話している。
New York Timesは、コロナ禍でより多くのアメリカ人が家でクリスマス休暇を過ごすため、この男性同様、何か楽しみを見出そうと小規模ながらお祝いを計画する人が増え、クリスマスツリー需要につながっていると伝えている。
アメリカ各地で売り上げ増加が報告されているという。ミシガン州のクリスマスツリー協会の話として、売り上げが約50%増えたと同メディアは伝えている。
ミシガン州のツリー農場では、11月中に売り切れに。ツリー農家はCTV Newsに、40年間で初めての経験だと語った。
カナダや、ヨーロッパのアイルランドでも、同様の理由で需要が伸びている。
カナダのクリスマスツリー農家協会の事務局長は、Global Newsに対して次のように説明している。
「オンタリオのツリー農家では今年、シーズン最初の週に訪れた人の数が過去最高を記録し、その翌週も同様でした」
「みんな『クリスマスはどこにも出かけないので、本物のツリーを購入しよう』と思い立ったのでしょう。今年はコロナでいろんなことができなかったので、どの家族も昔ながらのクリスマスを求めて、休暇を充実させたいと思っているのです」
CBCによると、モントリオールでは、自分たちの農場だけでは供給が追いつかず、卸売業者からツリーを購入しなければならない農家もいるという。
アイルランドのメディアecho liveも、国内の需要増の様子を伝えている。
アイルランドのクリスマスツリー農家団体トップは、自身の農場では例年、11月末ごろまではほとんど注文がないと明かす。ところが今年は、10月末ごろから注文が入り始めたという。
団体トップは、客から寄せられた声として、子供たちがハロウィーンをお祝いできなかった代わりに、クリスマスに力を入れようとする家庭が増えたと説明している。
輸送の遅れで...
需要の増加に加えて、輸送の遅れもツリー売り切れの要因となっている。
The Strait Timesによると、シンガポールのツリーを販売するショップでは、注文した一部のツリーが船での輸送中に状態が悪化し、売り物にならなくなるケースが起きたという。
この背景について、シンガポール国立大学ビジネススクールの准教授は「新型コロナの影響で、世界中の港で点検や検査などの作業により時間がかかっている」と指摘する。
過密状態が起きないように作業員を減らしたり、普段よりも厳しく船員や積み荷を検査したりすることによって、輸送の遅れに繋がっているとみられる。
このため、ただでさえ需要が増えているツリーの供給が追いつかなくなり、売り切れ状態となっているという。
クリスマスツリーとして本物の木を切断することは、自然破壊になってしまわないのか。
New York Timesによると、家庭用ツリーは、ツリー農場で育てたものが使用されている。切断された後、その場所に苗を植えるなどして新たに成長するように育てているという。
自然に生えている木を切断しているわけではないため、必ずしも環境に悪い行為とは限らないと説明する。
かといって、今年の需要増に合わせて無理に供給量を増やそうとするのは、環境の面からも得策ではないだろう。