新型コロナウイルスの変異株が見つかり、デンマークでミンク1千万匹以上が殺処分された問題で、波紋が広がっている。デンマーク首相は、法的措置が十分でなかったと涙ながらに謝罪。世界最大の毛皮オークション「コペンハーゲン・ファー」は、殺処分を受け、数年後に廃業する方針を発表した。
(※後半に、動物の死体の写真を掲載しています。ショッキングな写真のため、閲覧にはご注意ください。)
ミンク大量殺処分、何が起きたのか
デンマークは、世界最大のミンク毛皮生産国として知られている。
デンマーク政府は11月4日、変異した新型コロナウイルスがミンク農場で発見され、ミンクから人間への感染が確認されたことから、国内で飼育するミンクを全て殺処分すると発表。変異したウイルス株が広がると、開発中のワクチンの効果が弱まる可能性があると説明した。
海外メディアによると、国内には1000以上の農場があり、約1500万〜1700万匹のミンクが飼育されていた。
デンマーク政府はさらに、生産が盛んな北部でロックダウンを実施した。
「全頭殺処分」政府への疑問も
しかし、政府の対応には批判が広がった。
政府は全頭の殺処分を農場に命じたが、感染が確認されていない地域にこの命令を適用させる法的な権限がなかったことが判明。CNNによると、政府は殺処分を義務付ける新たな法整備を進めたという。
問題を受け、デンマークの食品農業大臣は引責辞任した。
AFP通信によると、11月19日までに約1000万匹のミンクが殺処分された。殺処分は現在も続いているという。
メッテ・フレデリクセン首相は26日にミンク農場を訪れ、「これは新型コロナのせいです。農場関係者には何の責任もない」と涙ながらに語った。政府の対応に法的不備があったことも認め、謝罪した。
毛皮産業の衰退加速か、オークションは廃業へ
大量殺処分は、デンマークの毛皮産業には大打撃となった。
世界最大の毛皮オークション「コペンハーゲン・ファー」は、デンマークでのミンク殺処分を受けて事業を縮小し、2〜3年後に廃業する方針を発表した。2021年に予定されていたオークションは通常通り開催するという。
近年、動物愛護の観点から毛皮産業には厳しい目が向けられているが、新型コロナウイルスのパンデミックは産業の衰退を加速させるかもしれない。
BBCによると、ミンク毛皮産業は中国の高所得者層の増加に伴い急成長した。中国でもミンクの毛皮生産は盛んで、オランダ、ポーランド、フィンランドなども主要な生産国という。
WHOによると、これまでにデンマーク、オランダ、スペイン、スウェーデン、イタリア、アメリカの6カ国で、養殖ミンクの新型コロナウイルス感染が確認されている。オランダ政府は、2021年までに国内すべてのミンク農場を閉鎖することを決定した。
動物保護団体の「ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル」は、毛皮産業が転換期を迎えたとの声明を11月13日に発表。ミンク養殖を終わらせるべきだと強調した。
「政府は、残酷で危険な毛皮産業を永久に終わらせ、毛皮農業関係者が経済的に安定する生活に移行するよう支援することに焦点を絞らなくてはなりません。毎年、毛皮によって搾取されている6000万匹のミンクは救われませんが、ミンク養殖を完全にやめることは、気まぐれなファッション業界によって将来の動物たちが苦しめられることを防ぐ最善の方法です」
デンマークでのミンク殺処分
(※後半に、動物の死体の写真が掲載されています。ショッキングな写真のため、閲覧にはご注意ください。)