憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案をめぐり、自民党は「審議を速やかに進める必要がある」として、11月26日に開かれる衆議院憲法審査会で、質疑と採決を行うことを野党側に提案した。
これを受け、Twitterでは「#国民投票法改正案に抗議します」とのハッシュタグが拡散。全国的に新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、「今やることか」などと批判の声が絶えない。
改正案はどんな内容なのか?議論になっているポイントをまとめた。
■改正公選法の内容を「国民投票にも適用」
国民投票法改正案は、2016年に改正された公職選挙法の内容を、憲法改正の手続きに関する国民投票にも適用するというもの。
具体的には、
・駅や商業施設などへの共通投票所の設置
・期日前投票の理由に「天災又は悪天候により投票所に到達することが困難であること」を追加
・投票所に同伴できる子供の範囲を「幼児」から「児童、生徒その他の18歳未満の者」に拡大
などの7項目だ。
■何が問題?
問題となっているのは、現行の国民投票法の、投票日前の「国民投票運動」に関する規定だ。
憲法改正案に対し、賛成又は反対の投票をするよう、又はしないよう勧誘することを「国民投票運動」という。政党などは、一定のルールのもとに「国民投票運動」を行うことができる。
例えば、投票期日14日前からは、国民投票広報協議会が行う広報のための放送を除き、テレビやラジオの広告放送は制限される。
この規定だと、14日前より前の期間では規制がないままとなっている。与党が提案する国民投票法改正案では、こうしたテレビやラジオのCM規制のほか、インターネット広告の規制も検討されていない。
主要野党はこの点を問題視し、「政党の資金力によってCM量に違いが出る」と指摘。「お金があれば広告手段をフル活用し、高い視聴率が見込める枠で宣伝されてしまう。これでは国民投票の結果が左右されてしまう恐れがある。現行の国民投票法では、意見広告として堂々と事前運動が可能で、公正な国民投票とは言えない」などと主張している。
主要野党は「改正案には、本当に改正すべき問題に触れられていない」ことを理由に反対してきた。
日本弁護士連合会も、2018年6月に会長声明を公表。「有料意見広告については、賛成派と反対派の意見について実質的な公平性が確保されるよう、慎重な配慮が必要」「広告禁止が国民投票の期日前14日となることが適切であるか十分に検討されるべき」などと主張し、改正法の抜本的な見直しを求めている。
■これまでの審議経過は?
国民投票法改正案は2018年6月、自民、公明両党と日本維新の会、希望の党の4党が共同提出した。同年7月に憲法審で提案理由説明があったが、その後法案審議は一度も行われず、継続審議扱いとなっている。
自民党が、衆院憲法審査会での質疑・採決を提案したことを受け、ネット上では「コロナの感染拡大が止まらない今、やるべきことなのか」などの声が相次いでいる。
安倍晋三前首相の「桜を見る会」の前夜祭をめぐる費用負担の疑惑が問題となる中、「どさくさに紛れて押し通そうとするのは火事場泥棒だ」との批判も上がる。
Twitterでは「#国民投票法改正案に抗議します」のハッシュタグがトレンドに入り、波紋が広がっている。
【UPDATE】
共同通信によると、与野党は11月25日、憲法改正手続きを定める国民投票法改正案を26日開く衆院憲法審査会で採決せず、見送ると合意した。