BTSの「Dynamite」、グラミー賞ノミネートの快挙達成。アメリカでどう評価されたのか?

アメリカの音楽メディアはBTSを「混乱する現代において、メンタルヘルスと若者のプレッシャーについて考えてきた」と評価する。
第62回グラミー賞授賞式でのBTS(=2020年1月26日撮影)
第62回グラミー賞授賞式でのBTS(=2020年1月26日撮影)
Mike Blake / Reuters

韓国出身、7人組男性グループのBTSの楽曲「Dynamite」が、第63回グラミー賞で、「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」部門にノミネートされた。

全編英語詞の「Dynamite」は、8月に配信リリースされ、アメリカのビルボードメインシングルチャート「HOT100」で1位を獲得。11月にはアルバム「BE」をリリースした。

グラミー賞ノミネートは、メンバーも目標に掲げており、悲願の達成となった。

これまでのBTSとグラミー賞の関係、そして、アメリカのメディアで「Dynamite」はどう評価されたのか、振り返ろう。

「白人優位」と指摘されるグラミー賞

第61回グラミー賞に出席したBTS(=2019年2月10日撮影)
第61回グラミー賞に出席したBTS(=2019年2月10日撮影)
Dan MacMedan via Getty Images

BTSが最初にグラミー賞にノミネートされたのは、第61回(2019年授賞式)だった。

アルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』が、「最優秀レコーディング・パッケージ」にノミネートされた。ただしこれは優れたパッケージやジャケットデザイン等に贈られる賞であり、音楽賞とは異なる。この時は、プレゼンターとして授賞式に参加した。

翌年の第62回(2020年授賞式)にはパフォーマーとして、ラッパーのリル・ナズ・Xとコラボしステージに立った。この時はノミネートされなかったが、韓国のグループとして初のグラミー賞でのパフォーマンスという快挙を成し遂げている。

第62回グラミー賞授賞式での、リル・ナズ・XとBTS(=2020年1月26日撮影)
第62回グラミー賞授賞式での、リル・ナズ・XとBTS(=2020年1月26日撮影)
Kevork Djansezian via Getty Images

「白人優位」と言われるグラミー賞において、韓国のアーティストが授賞式のステージに立ったことは大きな一歩と言えるだろう。

しかし一方で、数々の記録達成を果たし、社会的にも大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、BTSがグラミー賞で音楽的な評価がされてこなかったことには、疑問を呈する声も多かった。

Rolling Stoneは、「グラミーの授賞式でK-POPを認めないことは、音楽業界の日常的な現実とはっきりと対照的だ」、Forbesは、「歴史において、グラミー賞では非白人のアーティストは繰り返し疎外されてきた」と、それぞれ指摘した。

グラミー賞は、会員投票で決定する。特に注目を集める主要部門は、レコード賞、アルバム賞、楽曲賞、新人賞の4つ。

今回の第63回グラミー賞、BTSは、主要部門でのノミネートも期待されていたが、「最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス」部門のみのノミネートとなった。受賞者の発表及び授賞式は、現地時間の1月31日に行われる。

アメリカのメディアはどう評価したか?

音楽専門メディアから一般メディアまで、多くのメディアが取り上げたBTSの「Dynamite」。それぞれ、どう評価したのだろうか。

メンバーが作詞作曲を手掛けることも多いBTSだが、「Dynamaite」はアメリカのソングライターを起用した、初の全編英詞の楽曲。

メンバーは、Esquireのインタビューで「新型コロナがなければ、『Dynamite』は存在していなかっただろう」と話している。

音楽レビューサイト、Pitchforkでは「Dynamite」のMVに登場するミュージシャンのポスターの中から、ザ・ビートルズやデヴィッド・ボウイなどの名前をあげ、アメリカの音楽のレジェンドとして、ボブ・ディランやマイケル・ジャクソンについても言及。

タイオ・クルーズの同名ヒットソングのコーラスを彷彿させるとし、「西洋のポップミュージックの規範に則った上で、それを茶目っ気たっぷりに昇華している」と評価している。

Consequence of Soundは、「ますます混乱する現代において、メンタルヘルスと若者のプレッシャーについて考えてきた」と、BTSを評価。アルバム「BE」のラストナンバーである「Dynamite」は「誰もが苦しい状況において、ポップソングの完璧さを思い出させてくれる」とまとめた。

TIMEのオンライン版では、アルバム「BE」のディスクレビューの中で、「Dynamite」についても紹介。同曲がコロナ禍に制作された曲であることから、「困難な状況に喜びをもたらすための贈り物」と表現。「この曲がチャート(ビルボードチャート)のトップに降臨した理由は明らかだ」と称賛した。

アメリカ以外でも、イギリスの老舗音楽メディアNMEインデペンデントなども、「BE」や「Dynamite」のレビューを掲載している。

グループ名に込められた思い 

BTSのかつてのグループ名である「防弾少年団」には、「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬく」という意味を込めて名付けられた

BTSは、社会的な問題についても深く関心を持ち、チャリティ活動のほか、インタビューやスピーチなどでジェンダー平等やメンタルヘルス、人種差別の撤廃、多様性などについて積極的に発信してきた。

2018年にはユニセフの会合に出席。リーダーのRMはヒット曲「Answer: Love Myself」を取り上げ、「本当の愛は自分を愛することから始まる」と訴えた。

BTSは、かつて「LOVE YOURSELF」と題したアルバムシリーズも発表しており、「自分を愛すること」の大切さや、その困難さを、様々な視点から歌ってきたアーティストだ。

彼らの曲には、自らの悩みや葛藤などが等身大の言葉で語られている。それが、世界中で支持されている理由の一つと言えるだろう。

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