中国・河北省で、刑務所に服役していた男がスマホを使って地元当局の幹部になりすまし、SNSで知り合った女性から3年で600万円あまりをだまし取っていたことがわかった。
現地メディアの報道で発覚し、ネットでは「なぜ気づかなかったのか」などと刑務所のずさんな管理体制に批判が相次いでいる。
■「王小坤」は存在しない
この詐欺事件を報じたのは現地のネットメディア「澎湃新聞」。それによると、44歳の女性は2014年、SNSで河北省唐山市の当局幹部で「王小坤」と名乗る男性と知り合ったという。
ほどなくして女性と「王」は、顔をあわせることがないままに恋人関係になり、チャットでは互いに「夫」「妻」と呼び合うようになった。
しかし、「王」は上司へのプレゼント代などの名目で度々金銭を要求するようになり、女性が振り込んだ額は約3年間で38.9万元(600万円余)にのぼった。
不審に感じた女性は、公安局に務める友人の手を借り「王」の身辺を調査。すると「王」が偽の身分を名乗っていることが発覚したという。同じ名前の当局幹部も存在しなかった。
しばらくすると、今度は「王」から「仕事のことで罪に問われ、服役している」と連絡があり、実家の両親を訪ねて欲しいと頼まれた。女性が「王」の実家を訪ねると、そこで真相が発覚する。
「王」の本名は「羅栄兵」といい、盗みの罪でずっと服役していたというのだ。羅は刑務所に服役しながらスマホで女性と知り合い、金を友人らの口座に振り込ませ続けていたという。
2017年に羅栄兵が刑期を終え出所すると、女性は羅と初めて面会する。嘘をついていたことを認めさせると、地元公安局に通報。羅は詐欺の疑いで逮捕され、懲役8年6カ月の判決が言い渡された。
気になるのは、羅がどのように刑務所内でスマホを手に入れ、使っていたかということだ。
スマホを持ち込んだ方法について、羅は女性に対し「自分は炊事場の仕事を担当していて、管理が緩かった」などと説明したという。羅と女性は日に数度にわたってSNSの電話機能で会話していた。
■批判相次ぎ、ようやく調査
このニュースが報じられると、羅が服役していた刑務所に対し、中国メディアやネットユーザーからの批判が相次いだ。
SNS「ウェイボー」では「服役しててもスマホをいじれるとは、罪を犯した人間を甘やかしている」「なぜ3年間も気づかないのか」などのコメントが並んだ。
また北京紙「新京報」は論評を掲載し、スマホが持ち込まれた場合、幹部らを全員免職とする規定があることを指摘し「3年もの間、スマホに気づかなかったのは重大な失敗で、責任者は法によって処分されるべき」とした。
また、スマホが持ち込まれた方法や、看守の手助けがあったのかなどについても「関係部門が明らかにすべきだ」と主張した。
こうした批判を受け、刑務所を管轄する河北省監獄管理局は21日に声明を出し、今回の事件について調査を始めたことを明らかにした。「調査を徹底し、違法行為は厳正に処分する」などとしている。