日本でも同性婚の実現をーー。日本の大手電機メーカー・パナソニックや、飲料世界大手のコカ・コーラなど100社以上の企業が、婚姻の平等への賛同を表明した。
11月18日、LGBTQ支援・当事者団体が同性婚の実現に賛同する企業を可視化するキャンペーン「Business for Marriage Equality」を発足した。記者会見では、賛同企業であるパナソニック、コカ・コーラの役員も登壇。
パナソニックの役員は、「社員にもお客様にも当事者がいる。企業がこうした活動に参画することで、間接的ではあると思うが、法整備が進むことに寄与できるのではないか」と期待を込めた。
「Business for Marriage Equality」とは?
「Business for Marriage Equality」は、同性結婚の法制化に賛同する企業を可視化するためのキャンペーンだ。
全国で行われている同性婚訴訟を支援する団体「Marriage For All Japan ー結婚の自由をすべての人に」、 LGBT支援を行う「LGBTとアライのための法律家ネットワーク」、性的マイノリティが働きやすい職場づくりを目指す「虹色ダイバーシティ」の3団体が発足した。
キャンペーンでは、同性婚に賛同する企業の存在や数のほか、同性カップルに向けた各企業の取り組み、有識者や企業のトップ、社員によるメッセージをウェブサイト上で公開していくという。
賛同する企業を「見える化」することで、日本における同性婚の法制化を後押しする考えだ。
団体によると、11月18日時点で46社の企業が「Business for Marriage Equality」への賛同を表明した。(参画企業の一覧は下記に記載)
さらに、2018年に在日米国商工会議所(ACCJ)などが公表した、日本政府に対して婚姻の平等を認めることを求める提言への賛同企業・団体も含めると、全部で134社の企業が同性婚への賛同を示しているという。
発起団体は、さらなる企業の参画を呼びかけている。
同性婚に賛同、パナソニックとコカ・コーラの思い
会見には、賛同企業のパナソニック、コカ・コーラの役員が登壇。同性婚実現への呼びかけに連帯を示した理由について語った。
パナソニックは、2016年に同性カップルを結婚に相当する関係と認め、福利厚生の対象となるよう社内規定を改定した。制度だけではなく意識調査を行ったり、啓発のための映像コンテンツを作成したりして、社内での理解促進に努めてきた。
同社執行役員・CHROを務める三島茂樹さんは、「社員にもお客様にも当事者がいる。当事者が自分らしく働けて、最大限のパフォーマンスを発揮できるように環境整備をすることは企業として基本的な役割だ」と語る。
また、日本を拠点にするグローバル企業として、法整備に賛同していく必要があるとも指摘。企業として支援を表明することで、法制化を後押しできるのではないかと期待を込めた。
「弊社のような会社がこのような活動に参画することで、おそらく間接的ではあると思うのですが、法整備が進むということに寄与できるのではないかなと思っています」
過去に東京レインボープライドにスポンサーとして参加したコカ・コーラも、キャンペーンに賛同を示した。
人事本部でデピュティ シニアバイスプレジデントを務めるパトリック・ジョーダンさんは、「LGBTQへの理解促進は優先事項の一つ」だと話す。
ジョーダンさん自身もゲイを公表している。「ゲイである私に対し、コカ・コーラは安心してありのままの自分でいられる環境を提供してくれる」と話し、法整備が当事者の人にとっていかに重要なことか、思いを語った。
「社会的にも法律的にも支援を得られないとしたら、それはLGBTQの人たちのウェルビーイングやメンタルヘルスに多大な影響をもたらします。私自身も影響を受けました。そのことにより、16歳の時に自殺を考えたこともありました。そうすれば差別を受けることも、家族に恥ずかしい思いをさせることもないと思ったからです。そんな気持ちは誰一人、味わうべきではありません。だからこそ、企業が決心し日本における婚姻の平等を支援することに意味があります」
賛同企業の一覧は?
「Business for Marriage Equality」プロジェクトに賛同する46社の企業は以下の通り。(五十音順)
アカルク、アドバンスド・データ・コントロールズ、EY Japan、WeWork、近畿日本ツーリスト関⻄、Google、グラクソ・スミスクライン、CRAZY、KDDI、KDDIエンジニアリング、KPMGジャパン、三洋化成工業、資生堂、ジャスマック、Juerias LGBT Wedding、JobRainbow、セールスフォース・ドットコム、積水ハウス、Diverse、田辺三菱製薬、チェリオコーポレーション、TIEWA、テイクアンドギヴ・ニーズ、デロイトトーマツ、TENGA、デンソーテン、Niantic、ナイキジャパン、日本たばこ産業、日本コカ・コーラ、Netflix、パナソニック、PwC Japan、ビズリーチ、Facebook、富士通、freee、ベライゾンメディア・ジャパン、ボーダレスジャパン、ボッシュ、Marimelo、丸井グループ、三菱ケミカル、三菱ケミカルホールディングス、ラッシュジャパン、LIXILグループ
ACCJなどが公表した、婚姻の平等を求める提言への賛同企業・団体については、ここで確認できる。
なぜ同性婚の実現が必要なのか
婚姻が認められていないことから、同性カップルは異性カップルと異なり、結婚にともなう様々な法的保障を受けることができない。
「Marriage For All Japan ー結婚の自由をすべての人に」代表の寺原真希子さんは、「自分たちの関係性が国によって保護されていないという事実自体が、セクシュアルマイノリティの人の個人の尊厳を傷つけている」と指摘する。
「これは人権問題として国が取り組むべき問題であり、企業が喫緊に取り組むべき問題でもある。企業は社員、株主、顧客、消費者を含む個々人によって成り立っていて、全ての人が自分らしく生きることが、国や企業の維持発展にとって絶対に必要であるからです」
虹色ダイバーシティ代表の村木真紀さんは、近年は企業内でダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが進み、同性カップル向けの制度拡充が進んでいることを挙げた。
「しかし」、と村木さんは強調する。
「ビジネス分野での取り組みが進むにつれて、違和感も膨らんできました。これでは、同性同士が結婚できなくても大丈夫なように、現状を補強しているかのようです。私たちが求めているのは、性的指向や性自認によって格差がない、より公正な社会ではなかったでしょうか」
キャンペーンはそうした思いから始まった。これまでに研修やコンサルティングを提供した企業に対し、キャンペーンへの賛同を募ったという。
「多くの企業が、おそらく思い切って賛同していただいた。そのことに本当に感激しています」
「LGBTとアライのための法律家ネットワーク」の藤田直介さんは、 「国は高度外国人材の誘致に取り組んでいるが、同性パートナーを有する社員の平等処遇ができない日本は、制度的に不利な状況にあると言わざるをえない」と指摘。
「同性婚はもはや、先進経済圏におけるグローバルスタンダードとなっている。その基盤の制度(整備)が遅れることで、ダイバーシティ&インクルージョンの観点において日本が遅れを取ることを深く憂慮しています。ぜひ皆様と共にこの課題に向き合いたい」と話し、キャンペーンへの参加を呼びかけた。