感染拡大が続く新型コロナウイルスのワクチン開発が、世界各国で進んでいる。
アメリカの製薬大手「モデルナ」は11月16日、開発中のワクチンについて「94.5%の有効性」が確認されたとする暫定結果を発表。
今月9日には、同じくアメリカの製薬大手「ファイザー」が「開発中のワクチンで被験者の90%以上が新型コロナ感染を防ぐことができた」という暫定結果を発表した。
こうした発表に、新型コロナに有効なワクチンの開発、供給への期待が高まっている。
世界や日本のワクチンの開発状況や供給見通しなどはどうなっているのか。一部の例を紹介する。
(※データは、各社の発表や厚生労働省の公式サイト、ロイター通信の記事を参考にしています)
モデルナ(アメリカ)
▽開発状況:臨床試験の最終段階
▽保存温度・期間:-20℃で最大半年間、2℃〜8℃(一般的な冷蔵庫の温度)で30日
▽供給の見通し:2020年末までに約2000万回分(アメリカ国内)、21年中に5億〜10億回分(全世界)
▽日本での供給:2021年上半期に4000万回分(2000万人分)、第3四半期に1000万回分(500万人分)の供給を受けるという契約を締結。武田薬品が国内流通を担う。
※供給の見落としや日本での供給は、ワクチン開発に成功した場合
▽有効性:「94.5%の有効性」とする暫定結果を発表。
3万人以上を対象とした臨床試験(最終段階となる第III相試験)で、新型コロナウイルスによる感染症になったのは95人。そのうちワクチン接種したグループの感染者が5人だったのに対して、「プラセボ」と呼ばれる偽薬を打ったグループは90人。この結果から、モデルナ社は「94.5%」という数字を示している。
ファイザー(アメリカ)
▽開発状況:臨床試験の最終段階
▽保存期間・温度:-70℃で最大半年間、2℃〜8℃で5日
▽供給の見通し:2020年中に最大5000万回分、2021年に最大13億回分(いずれも全世界)
▽日本での供給:2021年6月末までに1億2000万回分を供給することで基本合意。
※供給の見通しや日本での供給はワクチン開発に成功した場合
▽有効性:「90%以上の有効性」とする暫定結果を発表。
4万3538人を対象にした臨床試験(最終段階となる第III相試験)で、新型コロナウイルスによる感染症になったのは94人。そのうち、ワクチンを接種していた人と偽薬を打っていた人の割合を比べた結果、「ワクチンに有効性は90%以上だった」と結論づけた。
アストラゼネカ (イギリス)
▽開発状況:臨床試験の最終段階
▽供給の見通し:全世界に20億人分を計画。アメリカに3億人分、イギリスに1億人分、ヨーロッパに4億人分、新興国に10億人分の供給をそれぞれ予定している。
▽日本での供給:1億2000万回分を提供することで基本合意。そのうちは3000万回分は、2021年3月までに供給。
※供給はワクチン開発に成功した場合
▽有効性:数万人規模の臨床試験(最終段階となる第III相試験)が継続中。12月ごろに暫定結果が発表される見通し。
アンジェス(日本)
▽開発状況:3段階の臨床試験のうち、1段階の2段階の橋渡しにあたる「第1/2 相臨床試験」を開始。次の臨床試験を2020年内に開始の意向。
▽供給の見通し(日本):タカラバイオ・AGC・カネカなどが生産を予定。生産体制等緊急整備事業として、93億8000億円が補助。
この他にも、アメリカのジョンソン&ジョンソンが臨床試験の最終段階に入っているほか、日本では塩野義製薬などが開発に乗り出している。塩野義製薬は21年末までに3000万人分の生産体制構築を目標としている。