女性蔑視的な言葉に対し、署名活動
世界で広く使用され、教育においても貢献してきたオックスフォード辞書。同出版局に対して2019年から、女性をめぐる性差別的な内容を改めるよう求める署名活動が行われていた。
改訂を求めたのは、主に3つの観点からだ。
・女性蔑視的で、女性が男性の所有物であるかのように暗示するフレーズや定義を排除すること。
・女性に関する収録語を拡大すること。
・トランスジェンダーの女性やレズビアンの女性など、性的マイノリティを表す例も含めること。
この署名活動に、3万以上が参加。2020年の国際女性デーには、Women’s AidとThe Women’s Equality Partyが、同出版局に対し、変更を求める公開書簡をカーディアンに発表していた。
「女性」の類義語に「あばずれ」「売春婦」
改訂が求められていた一つは、「女性(woman)」の類義語の表記だ。
ガーディアンによると、類義語として、「bitch」「bint」「wench」など、日本語で「あばずれ」や「売春婦」等を意味する女性に対する差別的な言葉が複数並んでいた。
Women’s AidとThe Women’s Equality Partyが発表した公開書簡では、「bitch(雌犬)は女性の類義語ではありません。女性を雌犬と呼ぶのは、非人間的です」とし、「これらはとても有害で、日常の性差別の一例にすぎません。そのことは、辞書の中で明確に記されるべきです」と、変更を求めていた。
改訂後は、この類義語に「攻撃的」「侮辱的」「時代遅れ」などの説明がつけられるようになった。
署名活動の代表である女性は、改訂を受け11月16日に、「私は非常に満足しており、キャンペーンはほぼその目的を達成したと感じています」などと署名サイトにコメントを発表した。
ただし、依然として性差別的な言葉が女性の類義語として残されていることには、ガーディアンの取材に「失望したままだ」とも話している。
たとえば、男性器が語源で、「バカ、滑稽な男性」などと定義される「dickhead」は、男性の類義語には含まれておらず、ジェンダーにおける非対称性が伺える。
ガーディアンのインタビューに、オックスフォード大学出版局は「独立した編集方法は、辞書が言葉をめぐる正確な現実を提供していることを意味します。そこには、不快で侮辱的な使用例を記録することも含まれており、私たちが必ずしもその言葉の使用に賛同しているわけではありません」とコメントしている。
「家事」の例文に変更も
「女性(woman)」及び「男性(man)」の説明も改訂された。
女性は「誰かの妻でガールフレンドで、もしくは女性の恋人」、男性は「誰かの夫でボーイフレンドで、もしくは男性の恋人」と、新たに定義されている。
CNNによると、「家事(housework)」の例文も変更されたという。
改訂前は、「彼女はまだすべての家事をしているところ」だったという例文が、改訂後は「ドアベルが鳴った時、私は家事をしていて忙しかった」に変更された。
オックスフォード大学出版局の広報担当者はCNNのメール取材に、このような改訂の背景についてこう答えている。
「辞書の利用者からのフィードバックにより重要視された要素(2019年の「女性」の定義に関する請願など)に焦点を当てる場合もあれば、時事やOxford Languagesチームのプロジェクトにそって推進される場合もあります」
同出版局では2020年に、人種差別にまつわる用語や、ノンバイナリー(性別を女性・男性どちらでもないと認識する人)の人を表す単数代名詞「they」などについて、辞書の改訂を行ってきた。