13人殺害事件めぐる被害女性への“偏見”の数々。イギリス警察が謝罪「さらなる苦痛を与えた」

“ヨークシャーの切り裂き魔”と呼ばれた受刑者が死亡したこと受け、コメントを発表しました。
Keystone via Getty Images

「ヨークシャー・リッパー(ヨークシャーの切り裂き魔)」と呼ばれたイギリス連続女性殺害事件のピーター・サトクリフ受刑者が、11月13日に死亡した。

捜査を担ったウエストヨークシャー警察のジョン・ロビンズ署長は、公式サイトに掲載したコメントの中で、事件の対応をめぐって被害者遺族に対して謝罪した

背景にあったのが、被害女性たちへの偏見だった。

Death of Peter Sutcliffe: Statements From Chief Constable John Robins On Behalf Of West Yorkshire Police.

West Yorkshire Police Chief Constable John Robins has today commented on behalf of the force regarding the death of Peter Sutcliffe. pic.twitter.com/g3RHuDc8wB

— West Yorkshire Police (@WestYorksPolice) November 13, 2020

被害女性への偏見

この事件は1975〜80年、イギリス中部のヨークシャー地方を中心に13人の女性が殺害された。

BBCによると、当時の警察や検察、記者らは、被害者の半数を占めていた性産業従事者について、偏見に基づいた差別的な対応をしていたと非難された。

彼らの偏見は、言動や態度にとどまらず、捜査そのものにも影響していた。

ガーディアンによると、警察は、違法な性産業従事者ではない女性を“罪のない女性“と呼び、そうした女性たちの命が奪われてようやく、事態を深刻に捉え始めたという。それどころか、公共の安全を守る責任を女性たち自身に転嫁し、夜分に外に出歩かないよう求めていた。

ウエストヨークシャー警察のベテラン刑事は、記者会見で次のように語ったという。

「被疑者は、性産業従事者を嫌悪していることを示している。多くの人たちと同じだ。警察としては引き続き、違法な性産業従事者を逮捕する。しかしながら、リッパーはさらに“罪のない女性”たちにも手をかけ始めている」

さらに、当時の事件の担当検事は、裁判で次のような差別的な発言を残している

「被害者の中には違法な性産業従事者もいたが、この事件でもっとも悲劇的なのは、それ以外の人たちも犠牲になったことだ。最後の6つの事件は、真っ当な女性たちへの暴虐だった」

「現代においても、当時においても誤りだった」

ロビンズ署長は声明の中で「犠牲者に関して警察が用いた言語やトーンなどによって、遺族の方々にさらなる苦痛や不安を与えたことを謝罪します」とコメント。

当時の社会的背景が影響した可能性にも触れた上で「(警察の対応が)現代において誤りであるように、当時においても誤りだった」と反省した。

続けて「ご存命のご遺族の方々に、今でも影響を残し続けている」ともつづった。

最後に「現ウエストヨークシャー警察署長として、心から謝罪いたします」と結んだ。

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