「ヨークシャー・リッパー(ヨークシャーの切り裂き魔)」と呼ばれたイギリス連続女性殺害事件のピーター・サトクリフ受刑者が、11月13日に死亡した。
捜査を担ったウエストヨークシャー警察のジョン・ロビンズ署長は、公式サイトに掲載したコメントの中で、事件の対応をめぐって被害者遺族に対して謝罪した。
背景にあったのが、被害女性たちへの偏見だった。
被害女性への偏見
この事件は1975〜80年、イギリス中部のヨークシャー地方を中心に13人の女性が殺害された。
BBCによると、当時の警察や検察、記者らは、被害者の半数を占めていた性産業従事者について、偏見に基づいた差別的な対応をしていたと非難された。
彼らの偏見は、言動や態度にとどまらず、捜査そのものにも影響していた。
ガーディアンによると、警察は、違法な性産業従事者ではない女性を“罪のない女性“と呼び、そうした女性たちの命が奪われてようやく、事態を深刻に捉え始めたという。それどころか、公共の安全を守る責任を女性たち自身に転嫁し、夜分に外に出歩かないよう求めていた。
ウエストヨークシャー警察のベテラン刑事は、記者会見で次のように語ったという。
「被疑者は、性産業従事者を嫌悪していることを示している。多くの人たちと同じだ。警察としては引き続き、違法な性産業従事者を逮捕する。しかしながら、リッパーはさらに“罪のない女性”たちにも手をかけ始めている」
さらに、当時の事件の担当検事は、裁判で次のような差別的な発言を残している。
「被害者の中には違法な性産業従事者もいたが、この事件でもっとも悲劇的なのは、それ以外の人たちも犠牲になったことだ。最後の6つの事件は、真っ当な女性たちへの暴虐だった」
「現代においても、当時においても誤りだった」
ロビンズ署長は声明の中で「犠牲者に関して警察が用いた言語やトーンなどによって、遺族の方々にさらなる苦痛や不安を与えたことを謝罪します」とコメント。
当時の社会的背景が影響した可能性にも触れた上で「(警察の対応が)現代において誤りであるように、当時においても誤りだった」と反省した。
続けて「ご存命のご遺族の方々に、今でも影響を残し続けている」ともつづった。
最後に「現ウエストヨークシャー警察署長として、心から謝罪いたします」と結んだ。