男性の家事・育児参加を促すため、厚生労働省は11月12日の労働政策審議会で、産後8週間は男性が育休取得しやすいように申請期限を短縮したり一時就労を可能とする仕組みを提案した。
また、個人に取得の働きかけや意向確認を行うなどの制度周知を企業に義務化する案も示した。
男性版「産休制度」の提案内容は?
産後8週は、女性は母体保護の観点から産後休暇として定められている期間。この期間に男性が育休を取得することは、「産後うつ」リスクの軽減や父親の育児参加促進などの効果が期待できるとされている。
厚労省は男性育休について議論している労働政策審議会の分科会で、産後8週間の男性の育休取得について、以下の提案を行った。
・取得可能日数は4週間程度に限定
・取得の申出期限を2週間程度に短縮(現在は1カ月前まで)
・期間内の分割取得を可能とする
・休業中、あらかじめ予定されている就労も可能とする(現在は突発的な事態への対応などに限定)
政府は2030年までに男性の育休取得率30%達成を目標に掲げている。
菅義偉首相は10月、政府の全世代型社会保障検討会議で「出産直後の時期に、男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入を図る」と意欲を示していた。
どんな議論だった?
分科会では、新制度を作ることに対しての反対は上がらなかった。
日本商工会議所の杉崎友則産業政策第二部副部長は「複雑な仕組みにすると利用も進まない。シンプルな内容にすべきだ」と指摘。「中小企業はマンパワーもなく、企業の実態にそった現実的な内容にすべき。申出期限は現行の1ヶ月前で、分割についても慎重に考えるべきだ」と訴えた。
一方、労働側からは休業中の就労については慎重な声が相次いだ。
連合の井上久美枝総合政策推進局総合局長は「そもそも予定されていた就労であれば、分割取得で対応できるのではないか」と指摘。
情報労連の齋藤久子中央執行委員は「男性に一時就労を認めるのは男女固定役割分担を強化することにならないか。今回の一定期間後に検証して見直すべきだ」と述べた。
また、妊娠や出産の申し出をした労働者に対し、育休取得の働きかけや意向確認などの制度周知を義務化するよう求める提案に対しては、経団連の鈴木重也労働法制本部長は「取得を強制することと促すことの境界が曖昧」だとして反対した。