アメリカの製薬会社「ファイザー」は11月9日、開発中の新型コロナウイルスのワクチンの臨床実験で90%以上の予防効果が確認できたという暫定結果を発表した。
ドイツの「バイオエヌテック」と共同開発しているワクチン。
4万3538人を対象とした臨床実験で、対象者をワクチンと偽薬を投与する二つのグループに分け、11月8日までに3万8955人に対して2度ずつ接種したという。参加者で陽性が確認されたのは94人で、実際にワクチンを接種した人と偽薬を接種した人を比較分析した結果、予防効果が90%以上となったという。
ファイザーは、「研究はまだ終わっていない。追跡を行う中で最終的なワクチンの予防効果の数値は変わる可能性がある」としている。治験は164件の症例が確認されるまで続けるという。
現在までにワクチンの安全性に問題はないが、今後さらに安全性が確認できれば、アメリカ食品医薬品局(FDA)に対して「緊急時使用許可」の申請を行う。
2020年中に最大5000万回、2021年には最大13億回分のワクチンが生産できる見通しという。
「早計に素晴らしいとは言えない」
東京都医師会の尾﨑治夫会長は10日の会見で、ファイザーのワクチンについて「どういう効果なのか、どのくらい効果が持続するのか、詳しいことがまだ分からない」と述べた。
安全性についても、「日本は特にワクチンの安全性を気にされる方が多い。早計に素晴らしいとは言えない」と慎重に語り、「希望は出てきたが、これで収束だという話にはならないだろう」と指摘した。
ファイザーが開発中のワクチンはマイナス80度で保存する必要があり、尾崎会長は「従来の不活化ワクチンは冷蔵保存できるが、マイナス80度となると輸送体制も問題となる。かかりつけ医で打つ、というのは不可能に近いのだろう。まだまだハードルが高い」と語った。
トランプ大統領は不満を連投
ファイザーの発表を受けて、トランプ大統領は公式Twitterで「私はずっと、ファイザーは選挙が終わった後でないとワクチンを発表しないだろうと言ってきた。選挙前に発表する勇気がなかったからだ。FDAも政治的な目的ではなく、命を救うために、もっと早く発表すべきだったのに!」と不満を連投した。
「ジョー・バイデンが大統領だったら、ワクチンができるまでにあと4年はかかったし、FDAもこんなに早く承認しないだろう。数百万人の命が失われただろう」
「FDAと民主党は選挙の前に、私にワクチンという勝利を手にさせたくなかったので、選挙の5日後に発表したんだ。私がずっと言ってきた通りだった」