激戦となったアメリカ大統領選で、民主党のジョー・バイデン氏の当選が確実となった。
年末・年明けの選挙人投票や開票を経て、次期大統領に就任する見通しだ。
トランプ氏に代わり、これからのアメリカを率いるバイデン氏。世界が注目する次期アメリカ大統領は、どんな人物なのか。
生い立ちや人柄、ここまでの歩みなどを追った。
どんな人?
バイデン氏は、オバマ前大統領の下で副大統領を務めた。
1942年11月20日生まれ。就任時は78歳で、最高齢のアメリカ大統領となるため、年齢や健康面で不安視されている。
バイデン氏のプロフィールページによると、東部ペンシルベニア州出身で、4人兄弟の長男。10歳で移り住んだデラウェア州を、バイデン氏はホームタウンと呼んでいる。幼少期から吃音に悩まされていた。
政治の世界に足を踏み入れたのは28歳の時。弁護士から転身し、ニューキャッスル郡議会議員に当選した。2年ほど務めた後、29歳で上院議員に初当選した。
その直後に、家族が交通事故に見舞われ、妻と1歳の娘を亡くし、息子2人も大けがを負った。
不慮の事故により、シングルぺアレントになったバイデン氏。
NZヘラルド紙によると、残された息子2人のことを考えて、議員辞職も考えたが、同僚から続けるよう説得されたという。
上院議員時代は、自宅のウィルミントンからワシントンD.C.まで、片道約190キロの距離を毎日、車や電車で通勤していた。
「息子たちを夜ベッドで寝かせて、朝起きるのを間近で見るため」と、プロフィールページは紹介している。
その後に再婚するまで、家族の助けも借りながら、シングルぺアレントとして子供2人を育てた。
1977年には高校教師だったジル・ジェイコブ氏と再婚し、娘を授かった。
上院議員から副大統領に
バイデン氏の大統領選挙サイトによると、議員として、気候変動や環境問題への対策にいち早く取り組んだという。地球気候保護法の導入に尽力し、上院外交委員長として気候変動対策の推進や機運を高めた。
委員長を含めて上院司法員会を16年務め、女性に対する暴力防止法の成立にも貢献。当時、“家庭の問題”と捉えられていたドメスティックバイオレンス(DV)といった女性への暴力や性被害の防波堤となったという。
オバマ政権では、副大統領に就任。
任期中は、オバマ前大統領とともに、景気刺激策や医療保険改革法(オバマケア)を成立させ、経済や医療状況の改善に寄与した。
そしてLGBTQの人たちの結婚の平等や、LGBTQに対する差別を禁じる「平等法」への支持をいち早く表明した。
New York Timesによると、副大統領だった2015年に息子を病気で亡くし、家族のケアを優先して辞任することも考えたという。
トランプ再選は「国や私たちを永久に根底から変えてしまう」
バイデン氏は、民主党の中でも中道穏健派。予備選では左派バーニー・サンダース氏を退け、民主党候補の座を勝ち取った。
大統領選への出馬を表明するビデオメッセージで、こう訴えていた。
「もし、ドナルド・トランプ氏にホワイトハウスで8年という時間を与えたら、この国の特徴、私たちの存在を根底から永久に変えてします。それが起きるのを見過ごし、傍観するわけにはいきません」
副大統領候補には、上院議員のカマラ・ハリス氏を選んだ。
ハリス氏はカリフォルニア州出身で、母親はインドから、父親はジャマイカからアメリカに来た移民だ。バイデン氏が当選した場合、ハリス氏は黒人として、さらに女性としてアメリカ初の副大統領になる。
政策は?
どんな政策を掲げているのか。
大きな争点となっている新型コロナ対策では、全国民に対するワクチンの無料配布やマスク着用の義務化などをあげている。
税制面では、企業や年収40万ドル(約4180万円)を超える富裕層に対して、大幅な増税を行う意向を示している。
熱心に取り組んできた気候変動については、トランプ政権で離脱したパリ協定への復帰を宣言。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることなどを掲げている。
LGBTQの人たちへの差別解消や平等のための一歩として、「就任100日以内に、LGBTQ平等法の成立を司法の最優先課題とする」という公約を明かしている。
最高齢や失言。性的暴行の告発は真っ向否定
最高齢の大統領となるバイデン氏の年齢を不安視する声もある。
また、失言が多いと言われており、「アフリカ系アメリカ人コミュニティと違って、ラテン(中南米)コミュニティは驚くほど多様だ」などと発言して物議を醸した。
バイデン氏は民主党候補となる直前、性的暴行の告発をされている。
バイデン氏が上院議員時代のスタッフの助手だった女性が、27年前の当時にバイデン氏から性的暴行を受けたと訴えている。
女性はAP通信などインタビューの中で、バイデン氏が彼女を壁に押し付けて、手を下着やスカートの中に手を入れられたと話している。
これに対してバイデン氏は、女性の訴えを全面的に否定。バイデン氏の選挙キャンペーン広報は声明を出し「この訴えについて明らかなことは、訴えが正しくないということ。全くもって起きていないことだ」と反論した。
USA Todayによると、この女性を含む8人が、バイデン氏から不快なボディタッチを受けたと声を上げている。
これについてバイデン氏は「もっと配慮するべきだった」などと述べている。
混戦の末、バイデン氏が勝利を確実にしたアメリカ大統領選。敗北したトランプ氏ですが、前回より多い7000万以上の票を得るという結果になりました。これが意味することは? 選挙が終わってもアメリカ社会の「分断」は残り続けるのか?
#ハフライブ では、日本から大統領選に在外投票したモーリー・ロバートソンさんらを迎え、「トランプ支持者の“心の中“と分断社会のこれから」をテーマに議論しました。(生配信日:2020年11月5日)
番組アーカイブはこちら⇨https://youtu.be/iqjG-xll4j8