東京都足立区議会で、自民党の白石正輝議員が「L(レズビアン)やG(ゲイ)が広がってしまったら、足立区民がいなくなってしまう」などと述べた問題で、白石氏は10月20日、本会議で発言を撤回し、謝罪した。
白石氏は本会議の冒頭、「9月25日の私の一般質問で、議員として差別的発言と受け止められる表現があり、不快な思いをされた方々、傷つけた全ての方々にこの場をお借りしてお詫び申し上げます。誠に申し訳ありません」と謝罪。
LGBTと少子化問題を結びつけた点や、「普通の結婚をするべき」と自分の価値観を押し付けるような発言をした点について、「不適切な表現」だったとし、「認識の甘さによりたくさんの方々の心を傷つけ」たと説明。「不快な思いをされた方々、傷つけた全ての方々、またご心配とご迷惑をおかけした足立区民の方々に対して心からお詫び申し上げます」と述べた。
最後に、「今回の発言の重さを反省し、今後はLGBTでお悩みになられている方々への性の多様性を受け入れられるよう努力して参りたいと思います」と話し、改めて謝罪した。
この日の本会議で申し出が許可された。会議録や同議会の公式サイトに掲載されている定例会の映像から、問題の発言部分は削除されるという。
「心から謝罪をするのか、言われて謝罪をするのか、しっかり見たい」
「謝罪する気はない」と頑なだった白石氏が何を語るのか、区内外が注目した。
この日は朝から足立区民が区役所前で抗議のスタンディングを行い、議会の傍聴席は定員オーバーに。抽選に外れた傍聴希望者が区役所1階に設置されたモニターで議会の様子を見守った。
傍聴券を求めて議会を訪れた足立区在住の高校生は、「白石議員が何を話すか直接聞きにきたかった」と語る。白石議員の発言は学校でも話題になっているといい、「本当に心から謝罪をするのか、議会の人に言われて謝罪をするのか、しっかり見たいと思った」という。
学生にとっては、身近にも当事者がおり、性的マイノリティの人たちは「当たり前」にいる存在だ。「私達からすると当たり前のことだけど、(白石議員は)高齢の方だからわからないのかな、とも思いました」と述べた。
差別問題に取り組む学生団体「Moving Beyond Hate」も、傍聴に訪れた。報道で白石議員の発言を聞き、メンバーからもすぐに「許せない」「何かアクションを」と声が上がったという。
代表の東京大学2年生・トミー長谷川さんはLGBTなどに関する差別発言を行ってきた自民党の杉田水脈衆議院議員について触れ、「ああいった発言が許されてきたので、今回の白石議員による発言につながった部分があるのではないか」とし、「謝罪だけでなく、今後こうした発言がされないよう、自民党には対策を求めたい」と党としての対策を求めた。
これまでの経緯は
発言があったのは、9月25日に開かれた足立区議会定例会。
白石氏は、一般質問で少子高齢化の対応について「L(レズビアン)やG(ゲイ)が法律で守られているじゃないかという話になったら足立区は滅んでしまう」などと発言し、批判を浴びた。
その中には「同性愛が広がったら足立区民がいなくなる」との趣旨の発言もあり、認識が誤っているとの指摘も相次いだ。
足立区議会自民党は批判の声が強くなった10月6日、白石議員を厳重注意。
同日、足立区議会は「9月25日の白石議員の発言に対する議長コメント」とする声明を発表し、「議員としてふさわしくない誤解を招く表現があり、不快な思いをされた方々に心からお詫び申し上げます」と鹿浜昭議長名義で謝罪した。
一方、白石氏は毎日新聞などの取材に対し「謝罪する気は全然ありません」「そういう圧力をかけようとすること自体が間違っていると思います」などと発言。謝罪や撤回はしない姿勢を見せており、SNSなどでは批判の声がさらに高まった。
事態が一転したのは10月12日。
足立区議会が白石氏から謝罪と発言撤回の申し出があったと発表した。同議会によると、議長から白石氏に対し公の場での謝罪と発言の撤回を「強く求め」たところ、本人が謝罪と発言の撤回を申し出たという。
問題をめぐっては、白石氏に抗議するオンライン署名も立ち上がり、市民団体「足立・性的少数者と友・家族の会」は約3万筆の署名を近藤弥生区長宛てに提出していた。
【UPDATE 2020/10/20 15:45】
白石正輝区議は体調不良のため本会議を途中退席した。