首相に対しあらゆる分野で助言をする「内閣官房参与」に、加藤勝信官房長官は10月13日、新たに6人を任命したと発表した。いずれも男性だった。内閣のブレーン役を担う6人の経歴や過去の発言を紹介する。
<経済・財政政策>高橋洋一・嘉悦大教授
経済学者として知られる高橋氏。元官僚で、首相補佐官などを歴任した。
6月27日にZAKZAKに掲載されたコラムでは、新型コロナウイルスの感染拡大が経済に与える影響をめぐり、「今回のコロナ・ショックは、生産の落ち込みもあるが、それを上回る需要の落ち込み、特に消費需要の消滅の影響が大きい。これを喚起するには、消費減税が政策として望ましい」などと主張していた。
日本学術会議の任命問題をめぐっては、高橋氏は同会議に対する批判的なツイートをしていた。中国による科学者の招聘事業「千人計画」に「積極的に協力している」と書き込んでいた自民党の甘利明・元経済再生担当相のブログ記事を引用。「学術会議。の実態。一部野党・メディアが騒ぐわけ」とツイートした。甘利氏はその後、ブログ記事の内容を「間接的に協力しているように映ります」と書き換えた。
<外交>宮家邦彦・立命館大客員教授
外交・安全保障が専門の宮家氏。キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹のほか、株式会社「外交戦略研究所」の代表を務める。1978年に外務省に入省し、在中国大使館公使や中近東アフリカ局参事官などを歴任。第1次安倍政権では首相公邸連絡調整官を務めていた。
2016年7月放送のフジテレビ系列番組「新報道2001」で、2020年に予定されていた東京オリンピックに向けたテロ対策として、「基本的人権の制限が必要か」という議論の中で、番組に出演した宮家氏は次のように発言している。
「もちろん基本的人権は大事ですから、それを制限するというより、基本的人権で許される枠の中で、公共の安全のために福祉のために、ある程度の義務を負わなければならないと思うんです」
<感染症対策>岡部信彦・川崎市健康安全研究所長
感染症対策の分野では、新型コロナウイルス対策を検討する政府の分科会のメンバーでもある岡部信彦氏が任命された。岡部氏は、WHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課長、国立感染症研究所感染症情報センター長などを経ている。
コロナ対策を検討する政府の専門家会議で議事録が作られていなかった問題をめぐっては、議事録の必要性に関して、6月23日の朝日新聞デジタルのインタビューで次のように述べている。
「委員会の構成や位置づけなど事務局側の問題と思いますが、僕自身はあっても構わないと思います。それによって自分の発言趣旨が大きく変わったりすることはあまり考えられない」
<経済・金融>熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミスト
経済・金融の専門家からは、熊谷亮丸(くまがい・みつまる)氏が選ばれた。1月10日から、首相の諮問機関である政府税制調査会特別委員を務めている。
2021年度の予算案に関するインタビューの中で、国の債務が膨らんでいることについて「当面は緊急事態なので、ある程度、歳出が増えるのはしかたないが、財政の規律を守り、むだはしないという精神を貫くことが非常に重要だ」と述べている。
<産業政策>中村芳夫・経団連顧問
中村芳夫氏は経団連で長く働き、何人もの会長に仕えた。1995年に経団連役員となり、事業再編を促す商法(現会社法)などの改正を経団連として初めて議員立法で仕掛け、実現した。安倍晋三内閣でも内閣官房参与を務めていたが、駐バチカン大使に起用されたことを受けて2016年3月に退任していた。
<デジタル政策>村井純・慶応大教授
デジタル分野では、「日本のインターネットの父」とも呼ばれる村井純氏が任命された。村井氏は1980年代、研究者による独自プロジェクトとして国内の大学間を結ぶ通信網の構築に力を注いだ。アメリカのインターネットと接続させ、その後のネット社会への道筋を開いた。
今後の日本のIT戦略について、村井氏は毎日新聞の取材に「今後デジタル化を進める上で重要になるのは、全ての人々がインターネットへのアクセスで困らないようにする方策だ」などと述べている。