自民党の杉田水脈・衆議院議員が、党内の会議で性暴力被害者への支援をめぐって「女性はいくらでもウソをつける」と発言した問題。杉田議員の議員辞職などを求めるオンライン署名を始めた「フラワーデモ」主催団体が10月13日、集まった約13万6000筆の署名を提出するため、自民党本部を訪問したが、同党は署名の受け取りを拒否した。
主催団体によると、本部の入口を入ってすぐに事務局のスタッフに止められ、「署名は党として受け取れない」と言われた。杉田議員への口頭注意だけにとどまらない措置を求める要望書は受け取ったという。
本部前では抗議のスタンディングが行われた。署名の呼びかけ人の一人、松尾亜紀子さんは、「この厚み、人数の重みを見てほしかった」と話す。署名は後日、菅義偉首相、自民党幹事長の二階俊博氏宛に郵送するという。
自民党前でフラワーデモ
署名には11日夜時点で13万6000筆、70の支援団体から賛同が集まっていた。
呼びかけ人で作家の北原みのりさんによると、野田聖子幹事長代行に面会を申し入れているが、署名の受け取りはしないとの返答があったという。
「署名を受け取る意思はあるかと聞いたら、党として受け取らないと決めたと野田議員からメールが金曜日(9日)にきました。アポがないから会えないと言われ、アポが取れないからきました。これだけの人の声が集まっているのに、受け取らないのは与党としてはありえないのではないかと思っています」
杉田議員は今回の発言だけではなく、これまでにも性暴力被害者を侮辱するような発言などを繰り返してきた。
「私たちの元には、この発言を聞いてさらに絶望の淵に追い込まれた、死にたいという気持ちで眠れないような悔しさを抱えている声が届いています。この声の重みを自民党には受け止めていただきたいですし、このような人権侵害発言を繰り返す議員が候補者として出てくることがどうなのかということを真剣に考えてほしいと思います」
「刑法改正に向けて、自民党の中にも被害者や被害者支援者の声に真摯に向き合ってくれた人もいます。そういった議員たちの信頼を裏切ることですし、被害者支援の制度拡充に向けて動いてきた行政の方々の努力を踏みにじる、非常にひどい発言だと思っています。がっかりさせないでほしい。声をせめて受け取ってほしいと強く改めて思いました」
松尾さんは、「このアクションはこれで終わりではない」と話す。
「野田議員も、『面談をする。性暴力支援や性暴力被害にあった人たちの声は無視できない』とメールではっきり書いてありましたので、面談はやっていただきます」と語った。
フラワーデモの参加者もスタンディングに加わり、自民党に対し、杉田議員への口頭注意だけにとどまらない措置をとるよう訴えかけた。
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野田氏は、10月9日に行われたハフポスト日本版のインタビューで、署名を受け取らない理由について、「署名を受けて『辞職しなさい』というのは、法律上できないこと。『辞職』と書かれている以上、私にはそういう権限もない。預かっても法律上できないことはちょっと無理です、とお伝えした」などと語っていた。
これまでの経緯は
問題の発言があったのは9月25日。
杉田議員は自民党本部で開かれた党内の会議で、性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」について、事業を民間委託ではなく警察が積極的に関与するよう主張。「女性はいくらでもウソをつけますから」と被害の虚偽申告があるかのように発言した。
「フラワーデモ」主催団体は、いち早く杉田議員への抗議を表明するために署名プロジェクトを立ち上げた。
杉田議員は過去にも、LGBTについて「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」などと述べたり、性被害を訴えたジャーナリスト・伊藤詩織さんについて「女として落ち度がある」と言及したりしてきた。
性犯罪被害者を貶めるような発言や、人権意識に欠けた、差別的な発言が繰り返されており、フラワーデモは「これは性暴力被害者を貶めるセカンドレイプであり、激しく性差別的であり、性暴力根絶に向けて取り組む動きを後退させかねないヘイトスピーチです」と指摘。
「ジェンダー不平等を改善すべく努める国会議員が、率先して性差別的発言を行い、性暴力への無知を露呈することは許されるべきことではありません」と抗議している。