中国は建国記念日にあたる「国慶節」に伴う8連休で、期間中の観光客が6億3700万人に達し、昨年のおよそ8割まで回復した。政府が8日夜に発表した。
国内の観光収入は4665億元(約7兆2300億円)となり、政府としては新型コロナで冷え込んだ経済の復活を印象付けたい狙いがあるとみられる。しかし専門家の目線は冷ややかだ。
■「とても安全だよ」不安なしだったのに...
「みんなもう、コロナが発生する前と何も変わらないと思っているよ。友達はほとんど旅行に出て行ったね」北京のIT企業で働く中国人男性は、ハフポスト日本版の取材にこう答える。
今年は国慶節に中秋節が重なる8連休(10月1日〜8日)で、政府や国営メディアは中国国内の旅行を盛んに促してきた。蓋を開ければ国内の観光客数は6億3700万人と昨年の79%にのぼった。
感染拡大が懸念され、多くの人が帰省を控えた旧正月(1月25日)シーズンとは大きく異なる。先ほどの男性に再び感染が拡大する不安はないか聞くと、「リスクは全くないよ。とても安全だ」と胸を張った。
政府発表によると、期間中の観光収入は4665.6億元(約7兆2300億円)で、昨年比で69.9%。国営放送CCTVによると、500以上の観光地が入場券の無料化や割引を実施したという。
政府は傘下メディアで「観光市場の復興は明らかで、消費を牽引した」と自画自賛する。中国経済の復活を印象付けたい狙いが透けて見えるが、日本をはじめとした海外旅行という選択肢がほぼないなかでの数字。元どおりとは言い難い段階にある。
中国経済が専門の北京・対外経済貿易大学の西村友作教授は「海外渡航ができないことを考慮に入れると(観光客が)約8割という回復ペースはやや緩やかな印象だ」と話す。
また、観光客は8割程度戻ったのに対し、観光収入が7割に満たなかった点については「消費は弱含んでいると見ていい。コロナによる収入減で、消費センチメント(消費をしたいと思う感情)は確実に低下している。やはり消費主導での経済成長は難しいと考える。GDP成長率を高めるためには投資主導にならざるを得ない」と分析している。
楽観視できないニュースもある。10月12日、山東省青島市は無症状感染者6人を含む計12人が新型コロナウイルスに感染したと発表した。市内の病院で院内感染も起きたとみられる。
国慶節休暇との関連は分かっていないが、経済活動の再開と感染抑制の難しいかじ取りを迫られる状況には変わりなさそうだ。