生後2カ月の子どもに血液を飲ませたとして、傷害の疑いで母親が逮捕された事件。母親は「代理ミュンヒハウゼン症候群」の可能性があると報じられている。どんな症状なのか?
■虐待の一種
日本小児科学会の公式サイトによると、代理ミュンヒハウゼン症候群(代理によるミュンヒハウゼン症候群、MSBP)とは、子どもを病気にさせ、献身的に面倒をみることで自分の心の安定をはかる行為。虐待の特殊型とされている。
加害者である親は、検査や治療が必要と医師が誤診するよう、虚偽の申告や症状の捏造をする。「加害者が医療者の注意を十分に引きつけることができないと、 子どもの症状がどんどん重篤になり、致死的な手段もいとわなくなることがある」として、十分な注意が必要という。
■2つのタイプ
同学会は、具体的な行為に「虚偽」と「捏造」の2つのタイプがあると説明している。
「虚偽」は、子どもには手を出さず、実際は出ていない症状を医師に訴え続ける。これにより、子どもは不必要な検査や治療を受けることになり、親への不信感を生む。
「捏造」は、「体温計を操作して高体温を装う」「子どもの尿に自分の血液を混ぜて血尿に見せかける」といった、検査所見を捏造して訴える行為。このほか、子どもに薬物を飲ませる、窒息させるなど、子どもに身体不調を作り出し、それを病気の症状として訴えるケースもある。
■疑われる兆候は
代理ミュンヒハウゼン症候群が疑われる兆候には、どんなものがあるのか。同学会は、以下のような項目を挙げている
・持続的または反復する症状
・子どもの全身状態が良いにもかかわらず、養育者は危機的な症状や重篤な検査結果を伴う病歴を訴える
・子どもの側を離れようとせず、よく面倒をみているようにみえるが、重篤な臨床状況に直面してもあわてるそぶりがない
・養育者と分離すると、症状が落ち着く
■早期の介入が必要
厚生労働省の虐待対応の手引きによると、代理ミュンヒハウゼン症候群かどうかは、不自然な検査所見や保護者の態度などから疑われることが多いが、確定することは難しい。保護者が「医療関係者から情報を得ながらエスカレートしていくことが多い」として、早期の介入が必要としている。
<虐待の相談窓口>
▽社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」
03-6909-0999
(月曜〜金曜午前10時〜午後5時、土曜日午前10時〜午後3時)
育児不安を抱える親や、虐待を受けている子どもからの相談を受け付けている。
▽NPO法人「チャイルドライン」
・でんわ 0120-99-7777 (毎日午後4時〜午後9時)
・オンラインチャット