「アカデミー賞」を主催している映画芸術科学アカデミーは9月9日(日本時間)、2024年から、作品賞の選考に新たな基準を設けると発表した。作品賞を受賞するためにはいくつかの条件を満たさなければいけないとし、その中には、「主要な役にアジア人や黒人、ヒスパニック系などの人種または民族的少数派の俳優を起用すること」や、「制作スタッフの重要なポジションに女性やLGBTQ、障がい者が就くこと」などが挙げられた。
白人中心と批判されてきたアカデミー賞にとって、大きな変化となりそうだ。
アカデミー賞に大きな変化 どんな基準なのか
映画芸術科学アカデミーは、「今こそ変化を起こす時だ」とツイート。2024年から、最重要部門である作品賞の選考に際して新たな基準を設けるという。
その内容は、作品のキャスティングや製作スタッフなどに、人種/民族的少数派や女性、LGBTQなどのセクシュアルマイノリティー、障がい者など、出演や雇用の機会が限られていた人たちを起用する、というものだ。
アカデミーが発表したリリースによると、作品賞選考にあたって、A〜Dの4つの基準を設けるという。
このA〜Dの4つの基準のうち、2つを満たさなければならない、というのが選考の条件だ。基準に関わる情報は非公開で選考に扱われる。
(A)作品のキャスティングやテーマ
・主役または重要な助演俳優に、少なくとも1人は、アジア人、ヒスパニック系、黒人・アフリカ系アメリカ人、ネイティブ・アメリカン、中東出身者、ハワイ先住民含む太平洋諸島出身者など、人種または民族的マイノリティーの俳優を起用しなければならない。
または
・二次的およびマイナーな役の少なくとも30%は、女性、人種/民族的少数派、LGBTQなどの性的マイノリティー、障がい者のうち2つのグループの俳優を起用しなければならない。
または
・作品のストーリーやテーマが、女性、人種/民族的少数派、LGBTQなどの性的マイノリティー、障がいを持つ人などをあらわすものである。
(B)製作スタッフ
・キャスティング・ディレクターや監督、プロデューサー、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティストなど、リーダーシップをとる製作スタッフのポジションのうち、少なくとも2人は女性、人種/民族的少数派、LGBTQ、障がいを持つ人のいずれかである。かつ、そうしたポジションのうち少なくとも1人は、人種/民族的少数派を起用する。
または
・ファーストアシスタントディレクター、照明監督、スクリプターなど、少なくとも6人の技術職のスタッフが、人種または民族的マイノリティーである。
または
・製作スタッフの少なくとも30%が、女性、人種/民族的少数派、LGBTQ、障がいを持つ人である。
(C)有給インターン、仕事の機会などの人材育成
・配給会社または資金調達会社が、女性、人種/民族的少数派、LGBTQ、障がいを持つ人を有給の実習生またはインターンシップとして起用する。
かつ
・映画の製作、配給、資金調達会社は、女性、人種/民族的少数派、LGBTQ、障がいを持つ人に人材育成や仕事の機会を提供する。
(D)マーケティングや宣伝
・スタジオや映画会社でマーケティング、宣伝、流通を担うチームの幹部のうち複数が、女性、人種/民族的少数派、LGBTQ、障がいを持つスタッフである。
詳しくは、 映画芸術科学アカデミーのリリースに記述されている。
白人中心と批判されたハリウッド、大きな決断
ハリウッドは、かねてより白人中心の業界だと批判されてきた。アカデミー賞をめぐっては、2016年、俳優部門にノミネートされた20人全員が2年連続で白人であったことから、「#OscarsSoWhite(白人ばかりのアカデミー賞)」と非難が殺到した。
批判を受けながら業界改善をしてきたアカデミーが、より多様性を包括した映画祭を実現するため、大きな決断をとったといえる。
アカデミーは、「この基準は、映画を見る観客の多様性をより適切に反映するため、スクリーンの中、外で、公平な表現を促進するように設計されています」と表明。
アカデミーのデヴィッド・ルービン会長とCEOのドーン・ハドソン氏は、これらの基準が「私たちの業界に長く残り続け、本質的な変化をもたらす促進剤となると信じている」とコメントした。