「私にとって、彼の死は、起こっていることに目を開かせる出来事でした」
全米オープンテニスで、ベスト8進出を決めた大坂なおみ選手。大会4回戦の9月6日、大坂選手は「トレイボン・マーティン」と書かれたマスクを着用していた。
大坂選手は、人種差別による暴力で命を奪われた黒人の名前が書かれたマスクを着用し大会に臨み、抗議の意を示している。4人目であるこの名は、2012年に白人自警団によって射殺された黒人少年の名前だ。
どんな事件だったのか?
■どんな事件だった?
朝日新聞デジタルやCNNによると、アメリカ・フロリダ州で2012年2月26日、黒人のトレイボン・マーティンさん(当時17)が、徒歩で帰宅する途中、ヒスパニック系の白人で自警団に所属するジョージ・ジマーマンさん(当時28)に胸を撃たれて死亡した。
ジマーマンさんはマーティンさんを射殺する前、「不審な人物がいる」と911に通報していた。電話口の通信指令係は、マーティンさんを追尾しないよう伝えたが、ジマーマンさんはその後すぐにマーティンさんを射殺したとみられている。
ジマーマンさんは、マーティンさんが挙動不審だったため後をつけ、争いになったため発砲したとして「正当防衛」を主張。地元当局がこの主張を認め、6週間にわたり逮捕しなかったことから、全米に抗議活動が広がった。
■無罪評決、抗議広がる
CNNによると、2012年3月19日、司法省とFBIはマーティンさんの死について調査を開始したことを発表。マーティンさんの両親が始めたジマーマンさんの逮捕を求める署名は、130万人を超えた。
その後、ジマーマンさんは殺人罪に問われたが、無罪評決が下された。無罪評決は黒人への人種差別だとして、抗議デモが全米に拡大した。
■大坂選手「変えなければ」
テニスの試合の棄権を表明するなど、人種差別問題に抗議し、自身の言葉で発信を続ける大坂なおみ選手。
マーティンさんの事件について、次のようにツイートした。
「私はトレイボンの死をはっきりと覚えています。 私はその時は子供で、ただただ恐怖を感じたことを覚えています。彼の死が最初ではなかったのはわかっていましたが、私にとって、彼の死は、起こっていることに目を開かせる出来事でした。 同じことがいまだに何度も何度も繰り返し起こるのを見るのは悲しいです。 変えなければいけません」