インターネット上での陰謀論「Qアノン(QAnon)」がアメリカで広がっている。8月の共和党下院予備選で「Qアノン」の信奉者が当選するなど勢力を増しており、11月の大統領選にも影響を与えるといわれている。
トランプ大統領を支持する「Qアノン」とは、一体何なのか。
ネットの匿名投稿者「Q」の書き込みから始まった陰謀論
Qアノンは、2017年10月、インターネット掲示板「4chan」から生まれた陰謀論とその信奉者のこと。
ガーディアンによると、2017年10月28日、「Q」というハンドルネームを使う匿名の投稿者が「嵐の前の静けさ」と名付けたスレッドを立ち上げた。Qは政府の内部告発者を名乗り、根拠のない主張を次々と書き込む。
海外メディアによると、その主張は以下のようなものだ。
「アメリカは『ディープ・ステート(闇の政府)』によって長年支配されている」
「バラク・オバマ元大統領やヒラリー・クリントン氏などの民主党系政治家、エリート層が小児性愛者向けの人身売買に関与している。トランプ大統領は、政府、企業、メディアを使って彼らとひそかに闘っている救世主である」
Qが唱える陰謀論は、「Q」と匿名を意味する「anonymous(アノニマス)」をかけあわせて、「QAnon(キューアノン)」と呼ばれている。
広がる陰謀論 集会にも「Qアノン」支持者の姿
「Qアノン」は国民の危機感をあおる荒唐無稽な内容で、各メディアも陰謀論扱いするが、インターネット上ではQの主張を信じる人が広がっていく。
2018年の夏ごろからは、トランプ大統領の演説会に「Q」の看板を掲げる支援者が目立ち始めた。同年11月にあった中間選挙をめぐるキャンペーンにも、「Qアノン」支持者の姿が見られた。
新型コロナで陰謀論がさらに広がる
「Qアノン」の勢いは衰えない。
2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、ネット上での陰謀論の広がりを後押しした。
外出禁止などが呼びかけられる中、TwitterやFacebookで「Qアノン」の主張が拡散。2社は対応に追われ、Facebookは8月までに、「Qアノン」に関連する790件のグループ、100件のページ、1500件の広告を削除したと発表した。
陰謀論者が予備選に勝利 「米政治が過激化している」
その存在感はすでに政界にまで広がっている。
8月にジョージア州で行われた共和党の下院予備選で、「Qアノン」を信奉するマージョリー・テイラー・グリーン氏が共和党の主流派に勝利し、当選した。
グリーン氏は「Qアノン」を推奨し、Facebookでは人種差別主義、反ユダヤ主義、反イスラム教徒の見解を表明した動画を公開していた。「セーブ・アメリカ。ストップ・ソーシャリズム(アメリカを守ろう。社会主義を止めよう)」をスローガンに掲げている。
AFP通信は、「グリーン氏が共和党の主流派に快勝したという事実は、11月の米大統領選まで3か月を切る中で、米政治が過激化している現状を浮き彫りにしている」と伝えている。
「Qアノン」にトランプ大統領は「それほどよく知らないが...」
トランプ大統領は、「Qアノン」に対して擁護的なコメントを残している。
記者から「Qアノン」の勢力について聞かれたトランプ大統領は、「それほどよく知らないが、私のことをとても好きだというのは知っている。それについてはありがたく思っている」とコメント。「彼らは我々の国を愛している人だと聞いた」と話し、直接的な批判を避けた。
また、グリーン氏が当選した際には、異例ともいえる祝福のメッセージを送っていた。
「将来の共和党のスター、マージョリー・テイラー・グリーン氏を祝福する。おめでとう」
「マージョリーは強く、決してあきらめない。本物の勝者だ!」
《「Qアノン」についての質問に答えるトランプ大統領》
11月5日夜9時(日本時間)から、モーリー・ロバートソンさん、長野智子さんとともに議論します。また、これまでアメリカの「ラストベルト(さびついた工業地帯)」を訪ね歩き、今回も現地で取材をしている朝日新聞機動特派員の金成隆一さんと中継をつなぎ、投票直後の「アメリカ」を伝えていただきます。
番組はこちらから⇒ https://twitter.com/i/broadcasts/1lDGLylbnRQJm
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