新型コロナいち早く告発した“英雄”亡くなった病院で...共産党組織トップが解任、隠された狙いは

喜びの声上がるが...中央政府に批判が向かないためのガス抜きの可能性も

中国・武漢で正体不明の肺炎の存在をいち早く告発し、その後自分も感染し亡くなった医師らが所属していた病院で、共産党組織のトップが解任された。

中国では医師の告発を封じ込めたことに対する不満が高まっていて、今回の解任劇は中央政府に矛先を向かわせないための「ガス抜き」とみられる。

解任された蔡莉書記(病院の公式ウェイボーより)
解任された蔡莉書記(病院の公式ウェイボーより)
病院の公式ウェイボーより

■犠牲の医師は一転して英雄に

中国の複数のメディアによると、8月27日夜に解任されたのは武漢市中心病院に設置された共産党組織の蔡莉(さい・り)書記。解任の具体的な理由は明かされていないものの、この病院では複数の医療関係者が新型コロナウイルスに感染し死亡していて、その責任を問われた可能性は高い。

亡くなった関係者のうち、中国中で注目されたのが眼科の李文亮(り・ぶんりょう)医師だ。李医師は新型コロナウイルスの存在が明らかになる前の2019年12月30日、医師仲間で作るSNSのチャットグループに「SARS(重症急性呼吸器症候群)の患者が出ている」などと投稿。

亡くなった李文亮医師 (Photo by MARK RALSTON/AFP via Getty Images)
亡くなった李文亮医師 (Photo by MARK RALSTON/AFP via Getty Images)
MARK RALSTON via Getty Images

その内容を別の人がネットに載せたため、李医師は「デマを流した」とされ、訓戒書に署名させられた。その後、SARSではなかったものの新型コロナウイルスの存在が公表されデマの疑いは晴れたが、李医師は自らも感染し、2月7日に死亡する。いち早く注意喚起をしたものの嘘つき呼ばわりされ、命までも落としたことに中国中で怒りが巻き起こった。

フランス・RFI中国語版は、李医師がデマを流したとされた時、蔡莉氏が「武漢の前向きな発展を妨げる元凶」などと罵ったとしていて、中国のSNSでも同様の情報が流れている。

このため、中国のネット空間では、ウイルスへの初期対応の失敗と、李医師ら医療従事者が犠牲になった責任を蔡莉氏に求める声が相次いでいて、解任のニュースには喜びの声が多く上がった。

中国当局は、新型コロナ対応をめぐって批判の矛先が中央政府に向かないよう細心の注意を払ってきた。地方政府のトップを相次いで処分し、李医師についても“烈士”とし英雄扱いをしている。

今回の解任劇も、対応の不備の責任を蔡莉氏に背負わせ「ガス抜き」させる狙いがあるとみられる。

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