NHKが運用するTwitterアカウント企画「1945ひろしまタイムライン」が、「朝鮮人」という言葉を使って、終戦直後の朝鮮半島出身者の行動を非難するツイートをし批判を浴びている。
「ひろしまタイムライン」は、戦中戦後の広島に生きた実在する3人が「もし75年前にTwitterを使っていたら」との設定。
「自分たちの言葉でつぶやきます」として、日記やインタビューを元に創作した文章を、2020年3月から、1945年の日付と合わせて毎日ツイートしている。特に、原爆投下前後に広島で起こったことや、そこに生きた人の感情を、臨場感あふれるツイートで伝えているとして話題になっていた。
一方、今回問題になっているのは8月20日に行われた終戦当時13歳だった「シュン」のものだ。「シュン」はこのように書いている。
ツイートはあくまでも当時13歳の「シュン」の視点によるもの。当時彼が使っていた言葉や感じた気持ちであることなどはサイトなどで説明されている。
しかし、一方で8月20日のツイートに対しては
・日頃から特に朝鮮半島出身者に対する差別や誹謗中傷の温床となっているTwitterという場所で、この気持ちを注釈なしで投稿するのは適切ではないのではないか
・戦争の全体像を知らない民間人個人の視点や当時の感情を共有することに主眼を置くあまりに、朝鮮半島出身者に対する戦時中の日本の加害責任についての視点が置き去りにされ、不適切な伝え方になっているのでは
などの観点から疑問の声が上がっている。また、一つ一つのツイートがバラバラに流通するTwitter上では難しかったのではという指摘も。
なお、戦時中の設定である6月にも「朝鮮人」の呼称を使用したツイートが行われていた。
ひろしまタイムラインとは
「ひろしまタイムライン」はNHK広島が制作する企画。「シュン」以外に、当時、中国新聞の記者だった32歳の人物をモデルにした「一郎」、夫が出征中で、産婦人科医の義理の両親を手伝う26歳の女性「やすこ」の3人のツイートで構成されている。
「シュン」は郊外に疎開していたが、8月6日、広島に汽車で戻ろうとする際にラジオで原爆投下を知り、市街地へ歩いて向かった。その後、原爆で大怪我を負った両親や弟と再会し、問題になったツイートの8月20日には汽車で家族とともに秩父へ避難している最中だった。
道中では必死に戦後を生き抜こうとする復員兵や戦争孤児からひどい仕打ちを受けたとするツイートなどの流れで、問題となった「朝鮮人」のエピソードが語られている。
モデルとなった人物は現在88歳で、ツイートの文章は書き残された日記とインタビューなどを元に、広島市内の高校生が創作しているという。
日記原文はNHK広島のウェブサイトで公開されているが、最新版は8月14日となっている。ツイートは日記原文とほぼ同一のものもあれば、インタビューを元にしたとみられる創作も織り交ぜられている。
■NHKが「実際の表現にならって掲載しました」と説明(UPDATE 08/21 18:15)
NHK広島放送局の「ひろしまタイムライン」の公式ブログは8月21日、「シュン」の一連のツイートに関する説明を掲載した。
それによると、8月20日にシュンが「大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!」などと書き込んだツイートは、シュンのモデルとなった男性が、広島の自宅から両親の故郷である埼玉県に移動する途中に体験したことを伝えたのだという。
その上でツイートの理由を「当時中学1年生だった男性にとって、道中の壮絶な経験が敗戦を実感する大きな契機になったことに加えて、若い世代の方々にも当時の混乱した状況を実感をもって受け止めてもらいたいと、手記とご本人がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載しました」と説明した。
また、6月16日に投稿した「どうやら朝鮮人のようだ」などのツイートも、モデルとなった男性が学徒動員でトンネル掘りに従事したときの経験を紹介したものと説明。「こちらも手記とご本人がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載しました」としている。
■NHKより回答(UPDATE 08/22 6:48)
NHK広報局はハフポスト日本版の取材に対して「ツイートの文言は、すべて責任者が監修しています。当該の日の日記は欠落しており、8月15日~21日までのツイートはご本人の手記(新井俊一郎『激動の昭和を生きて』2009年)やインタビューでの表現にならってツイートしています。NHKとして差別や偏見を助長する意図はありませんでした」と回答している。