泳いで助けに行ってはいけない。溺れている人の正しい救助法は?

海や川での水難事故が後を絶たない。溺れている人だけでなく、救助する人の命も守るために知っておくべきポイントをまとめました。
溺れた人を安全に救助する方法例
溺れた人を安全に救助する方法例
日本赤十字社の公式サイト

厳しい暑さが続く中、海や川で溺れて亡くなる水難事故が後を絶たない。

栃木県の矢板市の観光名所「おしらじの滝」では、8月18日夕方に10代と20代の男性2人が心肺停止状態で見つかり、いずれも搬送先の病院で死亡が確認された。19日には、神奈川県平塚市の海で遊んでいた男子中学生2人が流され、このうち1人が搬送先の病院で死亡する事故が発生した。1人は、現場に居合わせた男性に救助された。8月中には、岐阜県の川や静岡県の海水浴場などでも死亡事故が相次いだ。

溺れている人を見つけたとき、方法を誤れば救助者自身の命も危険にさらされる。正しい救助の方法は?海上保安庁日本赤十字社などが公開している資料を基に、ポイントをまとめた。

溺れているときのサインは?

溺れているかを判断するサインとして、海上保安庁は次のような動作を例に示している。

・後ろから波をかぶり、前髪が顔にかかりながらも浜に向かおうとしている

・浮き沈みを繰り返しながら、水面に顔を出して空気を吸おうとしている

・水面を手で叩いたり、もがくような動きをしたりしている

・頭が後ろに反り、手ではしごを上るような動きをしている

泳いで助けに向かうのは危険

岐阜県は公式サイトで、「溺れている人がパニックでしがみつき、一緒に溺れてしまう恐れがある」として、「絶対に泳いで助けに行かないで」と呼びかけている。

溺れている人を見つけたとき、まず始めにすることは「助けを呼ぶ」ことだ。

海保によると、海水浴場で溺れた人を発見したときは、監視員やライフセーバーなど周囲に助けを求める。海水浴場以外であれば、118番(海上保安庁)、110番(警察)、119番(消防)に救助を求めるよう呼びかけている。

通報したら、

1どんな事故か

2事故の場所

3事故者の人数

4通報者の名前と連絡先

を伝える。

道具が命を救う

救助で活用できるのは、「浮くもの」「長いもの」だ。

「浮くもの」は浮き輪やペットボトルのほか、クーラーボックスも活用できる。ペットボトルは投げやすくするために少量の水を入れ、キャップをしっかり閉める。クーラーボックスもフタをしっかり閉めて使う。

「長いもの」は棒や板切れ、ロープなど。

溺れている人に気付いてもらえるよう、大きな音を出したり「これから投げるよ」と声をかけたりしてから、その人の近くに上記の物を投げる。

水中に入って助ける場合は、複数の人が手をつなぎ、鎖のようにつながる「ヒューマンチェーン」を作り、先頭の人がクーラーボックスなどを持って溺れている人に近づき、物につかまらせる、という方法もある。

水を吐かせるより、先にすること

溺れた人を助けた時に意識がなかった場合、どう手当てをしたら良いのか?

日本赤十字社の公式サイトによると、反応(意識)がなければ、できる限り早く心肺蘇生を実施することが大切だ。水を吐かせるより先に心肺蘇生を優先する。

水中で足が地に着き、安全が確認できる場合は溺れた人の気道を確保し、人工呼吸を始める。長時間、水没していた人が心肺蘇生により回復した例もあるため、「諦めずに蘇生の努力を続けて」と呼びかけている。ただ、水中では効果的な心肺蘇生を行うことは難しいため、「なるべく早くボートに乗せるか、水際に引き揚げる」ことを推奨している。

日本医師会は公式サイトで心肺蘇生法の手順を公開している。

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