8月19日、立命館大学の学部生の約25%が休学を、約10%が退学を視野に入れているという衝撃的な調査が話題になった。
発表したのは、立命館大学の学生たちがつくる「立命館大学新聞社」。話題になったものの、数字がひとり歩きすることに懸念もある様子。担当した学生に話を聞いた。
「約10%が退学を、約25%が休学を検討」のインパクト
調査や記事執筆を担当したのは 3年生の堀ノ内杏彩さん。産業社会学部に在籍し、これまで統計調査についても学んできた。
自身も春学期がWeb授業になると知ったときに休学を頭がよぎり、Twitterでも「休学しようかな」とつぶやいている学生を見たことがこの調査につながったという。
調査は、9月からの秋学期を前に学生の意向を知ろうと8月にインターネット上で実施。「退学・休学を考えているか」「どういった授業形態を希望するか」などを聞いた。ソーシャルメディアなどで拡散し、学生証番号の一部を入力してもらうことで回答者が立命館大学の学生かどうかを検証した。有効回答数は1414件だった。
結果は、約10%が退学を、約25%が休学を検討しているというもの。この数字を立命館大学新聞社のTwitterに投稿すると数字のインパクトから広く拡散され、報道された。
堀ノ内さんは「4分の1も休学を考えてるんだというのは驚きでした」と話す。
「正確なサンプリングはできていない」
一方で堀ノ内さんは、「1割が退学を視野」などという数字だけが注目されていることに懸念を示す。
調査結果の実際の数字は、退学については「本格的に考えている」が2.3%、「どうするか考えている」が7.5%。立命館大が公表している資料によると、2018年度の学部生の退学率は1.7%で、調査結果で出た数字をどう判断するかは難しいところだ。
さらに、回答者のサンプリングには偏りもあるとする。
「インターネット上で回答者を募ったため、回答者に1年生が多かったり文系が多かったりと偏りがあり、正確なサンプリングはできていないんです。そこを理解した上で見ていただきたいです」
「このアンケートに答えようと思う人は、元々今の状況に不満があった人が多いかもしれません。そういう意味では、『休学や退学を検討している』という回答が多く出る可能性もあります」
「全面Web」「対面・Web併用」の希望が拮抗
そうした面を差し引いても、予想と違う結果が出て驚いた部分もあったという。
例えば、「秋学期の授業について最も希望する形態」を聞いた項目。「全面Web授業」が34.4%、「Web授業と対面授業の併用」が35.1%、「全面対面」が26.7%、「その他(自由記述)」が3.8%だった。
秋学期が「全面Web」「Webと対面の併用」「全面対面」だった場合、受け入れられるかどうかをそれぞれ聞いた項目でも、「全面Web」60%、「Webと対面の併用」64%、「全面対面」59%と大きな差は出なかった。
「私も最初は対面で授業を受けたいと思っていました。でも、Webで受けてみたら私にとっては対面より集中しやすかったんです。人それぞれ感じ方は違いますが、Web授業を受け入れている人は意外と多いんだなと感じました」
休学・退学を考える理由はWeb授業?
一方、休学・退学を考えている人は、全面対面での授業を希望する傾向が見られたという。休学・退学を検討している人に理由を尋ね、回答から言葉を抽出して繋がりや出てくる回数を可視化したところ、「授業」「オンライン」「WEB」「質」「低い」のかたまりが最も目立った。
堀ノ内さんは「金銭的な負担が大きく休学・退学を考える人がいるという報道は多くありますし、もちろんアンケートでそういった声もありました。でもそれ以上に、Web授業に不満を感じていることを理由にする声が大きかったのは驚きでした」と話した。
立命館大学は、9月下旬からの秋学期について、感染状況によっては対面での授業も可能になるとしている。