縄文土器の3Dデータを活用したソフトクリームの容器が「可愛すぎる」「一度でいいから食べてみたい」などとSNSで話題を呼んでいる。“付属品”のスプーンも土偶型というおしゃれっぷり。緻密でリアルな器、どうやって作ったの?製作者に聞いた。
コーンじゃないよ
製作したのは、大阪市在住のおもちゃメーカーの会社員、Nぼっくす+さん(32)。物づくりが趣味のNぼっくす+さんは、連日の酷暑でアイスを食べる機会が増える中、「ソフトクリームのコーンが土器の形をしていたらいいな」とふと思いついたという。
ネットで調べたところ、考古学者や自治体などでつくる「縄文文化発信サポーターズ」が、縄文時代の土器と土偶の3Dデータを公式サイトで無料公開していることを知った。
3Dデータをパソコンに取り込み、サイズ調整などの操作をして、3Dプリンターで出力して完成。容器はアイスのコーンに見えるが、実は食べられない。「質感や見栄え、色味が本物のコーンに見えるように、木の粉の入ったプラスチックを材料に使用しました」(Nぼっくす+さん)
ちなみにソフトクリームは本物で、コンビニで調達したという。SNSに公開した写真を撮る際は、「ソフトクリームが溶けないように(コンビニのアイスの)コーン部分を素早く食べきることが、一番大変でした」
「ロマンしかない」の声
「コーン化熱望」「この発想はなかった。最高」「ロマンしかない」ーー。
Nぼっくす+さんがTwitterで公開したところ、完成度の高さと見た目のおしゃれさに驚きと反響が瞬く間に広がった。
Nぼっくす+さんは、文化財のオープンデータ化について「誰でも自由に文化財の造形を活用することができるという取り組みは素晴らしい」と話す。今回の容器とスプーンは、自身での商品化は考えていないが、「観光業界の方など、オファーがあったら喜んで協力したい」という。
土偶のランプ、土器型ピアスも
「縄文文化発信サポーターズ」は、2020年に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックに合わせて、縄文文化を世界に発信するために設立された。事務局は新潟県長岡市。
2018年からは、縄文時代の文化財の3Dデータをオープンソース化するプロジェクトを始めた。誰でも自由に文化財の造形を活用することができる環境を生み出すことを目指し、長岡市所蔵の「火焔(かえん)土器」と「ミス馬高の土偶」の3Dデータを公開している。データを活用し、これまでに、土偶のランプや土器型のピアス、指輪などが製作されている。