「今や年に数回帰省するだけだから、我慢もするけど、コロナ渦で行かない言い訳になるから、ある意味ラッキー」
「コロナで帰省せずに済む」
「同居の話し合いをされるから、なんとしても義実家に帰省したくない私。今年は大勝利!!!嬉しいなあ」
新型コロナウイルスの感染拡大が東京や大阪、愛知など各地に広がる中、コロナ禍で初めてのお盆がやってくる。配偶者の親や親戚付き合いなど、それぞれの事情でお盆の帰省に憂うつさを抱いていた人たちからは、「コロナを理由に帰省せずに済む」とガッツポーズを決めるかのごとく喜ぶ声がSNSでつぶやかれている。「コロナで帰れずに残念」という人だけではなさそうだ。
■「嫁業」の苦痛
「勝手が違う家に1週間近く泊まって『嫁業』をするのは、苦痛でしかありません。今年はGWもお盆も、義理の実家に帰省することを免れたので、むしろ良かったと思っています」
2人の幼児、夫と暮らす東北地方の30代女性は、そう打ち明ける。
毎年、GWと盆は義理の実家に5〜6泊するという女性。夫の実家がある隣県ではクラスターが発生し、毎日感染者が増えていることから今年は帰省を見送ることにした。
「酔っぱらった義父の話を聞かなければいけないし、料理の手伝いや後片付けも勝手が違う家では疲れます。そして、帰省すると夫も働かなくなります。普段は育児と家事を割としてくれますが、気付いたら横になってゲームをしています」
こうしたことから、女性はコロナを理由に「今年は帰省せずに済んでラッキー」と感じているという。
■「休んだ気がしない」「ストレス」
毎年お盆の時期になると、帰省のことを考えて気持ちが沈む「帰省ブルー」との言葉もSNSで見かけるようになる。マーケティング調査事業「ゼネラルリサーチ」は2019年8月21〜23日、義理の実家に帰省する妻と、帰省を待つ義母計1080人を対象に「帰省」に関するアンケートをネットで実施した。
帰省する妻(575人)に対して「義理の実家に帰省することについて当てはまるもの」を尋ねたところ、
「休んだ気がしない」(25.2%)
「気が進まない」(23.0%)
「楽しみ」(22.6%)
「ストレスが溜まる」(13.7%)
「楽ができる」(11.1%)
「その他」(4.4%)
との結果になった。
上記を選択した理由となるエピソード(自由回答)では、
・食事作りを手伝うが、勝手が分からずとても疲れる(東京都、30代女性)
・子どもを連れて帰るので楽しみにしてくれるのはわかるが、駄菓子などあれこれと与える。食べさせたくないので断りたいのに、義母の手前言えない(福岡県、40代女性)
・実家が遠い。行くだけでも疲れる(兵庫県、30代女性)
といった回答があった。
一方で、帰省を待つ義理の母(505人)への「義理の娘が帰省することに対して当てはまること」という質問には
「ゆっくりしてほしい」(30.7%)
「ご馳走を作ってもてなしたい」(24.8%)
「楽しみ」(23.6%)
「正直息子と孫だけで良い」(10.5%)
の順で回答が多かった。立場によって「お盆帰省」の受け止めが大きく異なることが浮き彫りになった。
■専門家は「オンライン帰省、検討を」
お盆の帰省は自粛するべきか?
政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長は、8月5日に緊急会見を開き、お盆の帰省に関して政府に提言したことを明らかにした。
提言では
・帰省する場合には、手指消毒やマスク着用、大声を避ける、十分換気をするなど基本的な感染防止対策を徹底し、三密を極力避ける。特に大人数の会食など感染のリスクが高い状況を控える
・上記のような対応が難しい場合には、感染が収束するまでの間、オンライン帰省を含めて慎重に考慮する
・そもそも発熱等の症状がある方は帰省を控える。感染リスクが高い場所に行った場合には慎重に判断する
といった留意点を、政府から国民に促すよう求めた。
尾身氏は「お盆休みの性質上、若い人が出身地に帰れば両親、おじいさんおばあさんなど感染した場合に重篤化しやすい高齢の方もいる」として、オンライン帰省のほか、電話や帰省の延期といった選択肢も検討するよう求めた。
西村康稔経済再生担当相は分科会の提言を受け、5日の記者会見で、お盆に帰省する場合について「お年寄りは重症化するリスクがあるので十分注意してほしい」と強調した。一方で一律自粛は求めず、「感染リスクも考えて、国民皆さんがそれぞれで判断してほしいとの考えを示した。