新型コロナウイルスや豪雨災害の対応を審議するための臨時国会の早期召集を巡り、政府・与党は野党側の要求に応じない方針を示した。時事通信などが報じた。ネットでは、「無責任だ」「非常事態なのに国会は夏休み…」などと、批判や落胆の声が上がる。国会が開かれなければ、感染拡大を防ぐための特別措置法の改正もできない。早期召集に応じないことは、「内閣が召集を決定する」ことを明記する憲法に違反しないのか?
■閉会中審査は継続
朝日新聞デジタルによると、自民党の森山裕・国会対策委員長は8月4日、立憲民主党の安住淳・国対委員長と会談し、立憲など野党4党が求める臨時国会の早期召集に応じない考えを示した。党幹部からは「早くても10月下旬以降」との見方が出ているという。時事通信によると、衆参両院で原則週1回開いてきた閉会中審査は継続することでは大筋一致した。
■憲法の規定は?
臨時国会に関して、憲法53条は次のように定める。
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
立憲民主、国民民主、共産、社民の野党4党は7月31日、憲法53条に基づき、臨時国会の早期召集を求める要求書を大島理森衆院議長に提出していた。
立憲民主党は、8月4日、公式Twitterで、コロナの感染拡大や豪雨災害への対応を挙げ「この状況を乗り切るためには、立法措置も少なからず必要になる。国会を開会しなければ法改正ができない」と訴えている。
■那覇地裁の判決は「法的義務」
安倍内閣が2017年に野党からの臨時国会召集の要求に約3か月応じなかったことの違憲性が争点となった裁判で、2020年6月の那覇地裁判決は、「憲法53条に基づく臨時国会召集の要求を受けた内閣には召集義務がある」と指摘した。野党議員らへの損害賠償請求を棄却し、安倍内閣の対応に関して憲法判断も示さなかった一方で、
・憲法53 条には「少数派の国会議員の主導による議会の開催を可能にする」目的がある
・内閣には「要求を受けた場合、臨時国会を召集すべき憲法上の義務がある」「単なる政治的な義務にとどまらず、法的義務がある」
■専門家「国民主権ではなくなる」
臨時国会を安倍内閣が3か月以上召集しなかったことは違憲だとして野党議員が国家賠償を求めた岡山訴訟の弁護団長、賀川進太郎弁護士は、ハフポストの取材に「那覇地裁の判決は、憲法53条の一般的な解釈を示したもの。今回のコロナ対策を目的とした臨時国会の召集にも当然当てはまる」と話す。
那覇地裁判決は、召集時期について「内閣の裁量の余地は極めて乏しい」と断じている。これに対し、賀川弁護士は「早期召集に応じないことが認められるなら、内閣が何をやっても追及できない状態。全てを内閣にフリーハンドに委ねることになり、国民主権ではなくなる」と危機感を募らせる。「内閣に開く、開かないという決定権や広大な裁量があると政府が考えるのなら、それは憲法の解釈を誤解している。事務手続きに必要な合理的期間を大幅に延長して召集に応じないのなら、明らかに憲法違反です」
■東京都医師会長、「これは政治の役割」
早期の召集は、コロナ患者の治療に最前線で当たる現場の医師からも切望する声が上がる。
東京都医師会の尾崎治夫会長は7月30日の記者会見で「(新型インフルエンザ等対策)特別措置法を改正し、法的拘束力と休業補償のある休業要請をするべき」として、臨時国会を開くよう政府に求めた。「一刻も早く国会を開いて、国ができること、しなければならないことを国民に示してください。これは我々がいくら頑張ってもできません。これは政治の役割であります」と強調した。