SNSの書き込みで名誉を傷つけられたとして、俳優の春名風花さんが書き込みをした投稿者1人に慰謝料などを求めた訴訟は7月16日、刑事告訴の取下げと、被告が春名さん側に示談金計315万4000円を支払うことで示談が成立した。
春名さんが7月20日、YouTubeに動画を配信し、公表した。
■当初は示談を拒んでいた
YouTubeでの報告によると、春名さん側は2018年10月以降、Twitterなどプロバイダー4社に対して投稿者の個人情報の開示手続きを開始。2020年1月には、投稿者を神奈川県警に刑事告訴した。
春名さんは当初、被告から示談の申し入れがあったものの、拒否していた。「お金の問題よりも、きちんと社会的に罪を償ってほしいという気持ちだった」「ここはきちんと刑事民事の両方で勝訴し後の人々のために一つでもおおき判例を作るべきではないかと思いました」と理由を明かした。
今回示談成立に転じた背景について、春名さんは動画で次のように報告した。
「色んな方から、現行法では本当に軽微な罰だけで終わってしまうことを聞きました」「法律で裁く方が罪が軽くなってしまうかもしれないと判断しました」
刑法の名誉毀損罪は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金刑。侮辱罪は拘留または科料が課される。
春名さんは弁護士に相談の上、「現状では誰にとっても生活する上で必要なお金という目に見えるものを失うことでしか、『あなたのしたことが悪いことです』と教えられる手段がないのかもしれないという悲しい現実を知りました。その結果、示談を受け入れることにしました」と語った。
■辛い記憶はなくならない
投稿者の個人情報開示に始まる約2年にわたる裁判を振り返って、春名さんは次のように述べた。
「今更謝られてもお金をもらっても、辛かった記憶がなくなるわけでも、無くなくなった仕事ができるようになるわけでも、逃したチャンスがもう一度巡ってくるわけでもありません。
それに誹謗中傷していたのはこの人だけではなく数え切れないほど大勢いて、何も状況は変わっていません。それでも、(担当の)弁護士をはじめ警察や取取材にこられた人が真剣に話を聞いてくださったおかげで、何より相手の身元を特定できたことで誰に狙われているかわからない恐怖から何万分の一でも解放されたことは大きいです。ここまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました」
「これまでひどい言葉に悩み苦しむだけでどうしたらいいかわからなくてずっと不安で止まっていた時間が、勇気を出して訴訟したことで、またゆっくりと動き出した気がします」
■今も被害に苦しむ人たちへ
春名さんは、誹謗中傷の書き込みをする人に対して警鐘を鳴らす。
「私は表現の自由、言論の自由を守りたいと思っているし、いろんな意見があってこそ人間は面白いと思いますので、建設的な批判や議論はあっていいと思います。
でも単に相手の人格や生活を破壊するだけの暴力や批判の度を超えた単なる嫌がらせというのは誰のことも幸せにしません。今は気持ちよく書いてストレス発散できるかもしれませんが、そういう悪意は相手だけでなく、書いた自分にも少なからずダメージを与えます。やめましょう、絶対に」
小学生の頃からネットの書き込みの被害を受けてきた春名さん。報告の動画は、今もSNSの中傷に苦しむ人たちに向けたメッセージで締めくくった。
「私は必ず生きて、生きたまま未来を変えたい。何を言われても、何度転ばされても私は役者になるし、夢も未来も諦めない。今日も明日も生きていくので、みんなも一緒に未来を変えて行こうね。
同じようなことで悩んでいる皆さんへ。嫌なことをされたら嫌だって言っていいし、一人で悩まずにいろんな人の力を借りてください。どうかみなさんも勇気を出して立ち上がってほしいなと思います」