日本規格協会は、JIS規格の参考例として公表していた性別欄や顔写真欄のある履歴書を、7月9日付で様式例から削除した。履歴書に性別欄があることで「採用試験でアウティングを強制される」などとして、トランスジェンダーの当事者や支援者などから性別欄の削除を求める要望が寄せられていた。
協会によると、JIS規格は、伝票や履歴書といった帳票の仕上げ寸法のほか、紙の厚みなどを規定。一方で、性別欄など個々の帳票の表記を定めるものではなかったという。「履歴書は、JIS規格の内容を説明する解説に、様式例の一つとして掲載していた」としている。協会は、この「解説」を作成する業務を担う。
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だが、実際には市場に流通する履歴書の多くが、協会が解説で示していた性別欄や顔写真の欄がある様式例を参考に作られ、企業の採用試験でも広く用いられていた。
履歴書の性別欄を巡っては、トランスジェンダーの当事者から「面接段階でアウティングを強制される」などとして、削除を求める声が上がっていた。
協会は7月17日、ウェブサイトで「JISに履歴書の様式が規定されているとの誤解を招く恐れがあることから、解説から履歴書の様式例を削除しました」と発表した。
若者の労働支援に当たるNPO法人「POSSE」の佐藤学さんは「日本で最も一般的な履歴書の例から、性別だけでなく顔写真や年齢を問うものが削除されることは大きな前進」と評価。一方で、市販の履歴書で実際にこれらが削除されるかどうかは販売会社の対応に委ねられるとして、「履歴書を制作・販売する企業にも削除をはたらきかけたい」としている。
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