新型コロナの影響で、甲子園やインターハイといった学生スポーツ大会が軒並み中止となった。
目標を失い、喪失感を抱える学生アスリートにとって、懸念されるのがメンタルヘルスや依存症。
一般社団法人「ARTS」代表の田中紀子氏は「選手たちの喪失感は計り知れないはず。いまの悔しさに耳を傾けて」と、アスリートへの依存症予防教育とメンタルケアの必要性を訴える。
「ARTS」が実施した緊急アンケートでは、スポーツに打ち込んだ経験のある依存症者の10%が、「スポーツを辞めたことがきっかけで依存症を発症した」と答えている。
回復途中のアルコール、薬物、ギャンブル、ゲーム依存症者のうち、スポーツに打ち込んだ経験のある295人が回答。スポーツを辞めたことが、自身の依存症に影響があったかを選択式で尋ねた。結果は次の通りだった。
「スポーツを辞めたことがきっかけで依存症を発症した」:30人(10%)
「もともと依存傾向や依存症であったが量や頻度が増えた」:64人(22%)
「特に影響はなかった」:201人(68%)
スポーツを辞めた時の心境を選んでもらうと、「ぽっかりと心に穴が空いたようだった」(15%)、「やることがなくなった」(23%)「目標を見失った」(8%)。「ホッとした」(28%)という人もいた。
依存症治療に携わる国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏はコメントで、次のように警鐘を鳴らす。
「元アスリートの依存症患者さんは意外に多い。 人と競ったり、比較する心性は依存症と非常に親和性が高い。 スポーツによる達成感は脳内で大量のドーパミンを放出し、非常に大きな快感をもたらすことから、優秀なアスリートほど、『脳内麻薬』依存症になっているといえるかもしれない」
一般社団法人日本トップリーグ連携機構は、アスリートの依存症予防教育を推進しているが、田口禎則事務局はコメントで「アスリートに起こりうる依存症リスクはまだまだ知られていない」と指摘。「選手たちのメンタルケアに慎重に対応する必要がある」とつづっている。
ハフポスト日本版は、アンケートを実施した田中紀子氏に話を聞いた。田中氏は、指導者や大会運営側がアスリートと依存症の問題に関する知識が十分でないという課題を挙げ、次のように指摘する。
「選手たちの喪失感は計り知れないはず。『悔しさをバネに』『将来の糧』といった“未来に対する精神論”ではなくて、いまの悔しさに耳を傾けないといけない」
田中氏は「経験がなく、気持ちが分からない人たちから励まされることよりも、本人たちの思いをじっくり聞くことが大切」と強調。「選手本人たちがつらさを打ち明けられる、自助グループのような場所をつくってほしい」と呼びかけた。
依存症は、決して学生に無関係ではない。18歳になればパチンコもできるほか、ゲームや処方薬に依存するリスクは、学生にも十分あるという。
各種相談窓口は以下の通り。
薬物
チェックリスト (特定NPO法人アスク)
各都道府県や政令指定都市の精神保健福祉センターに、薬物依存についての相談窓口がある。医療機関や自助グループについての情報にもアクセスできる。
✅ダルク
薬物依存症から回復した当事者が中心になって運営している回復施設。全国に拠点があり、家族の相談も受け付ける。
薬物依存症者の自助グループ。
薬物依存症者を抱える家族の集まりで、全国各地で開催されている。
✅ナラノン ファミリー グループ ジャパン(ナラノン)
薬物依存症者の家族や友人の自助グループ。
薬物依存症についての啓発、情報収集のプラットフォーム
アルコール
<「自分が/家族がお酒を飲みすぎている…」と感じた際の相談窓口>
・全国の「精神保健福祉センター」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/mhcenter.html
・全国の「保健所」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
・「依存症対策全国センター」
・「大船榎本クリニック」
http://www.enomoto-clinic.jp/hp-list/ohfuna/
ギャンブル
○全国精神保健福祉センター http://www.zmhwc.jp/centerlist.html
○(公社)ギャンブル依存症問題を考える会 相談専用電話 070-4501-9625
○NPO法人 全国ギャンブル依存症家族の会 https://gdfam.org/
○ギャンブル依存症回復施設(一社)グレイスロード 055-287-8347
○ギャンブル依存当事者自助グループ GA http://www.gajapan.jp/jicab-ga.html
○ギャンブル依存症家族の自助グループ ギャマノン http://www.gam-anon.j