「性犯罪者が紛れているとは…」キッズライン事件教訓に、性犯罪歴データベースの創設を。被害女児の母や保育関係者が訴える

男性シッターによる被害女児の母親は記者会見で、フローレンスの駒崎弘樹さんらとともに「DBS(Disclosure and Barring Service)」の日本版の導入の必要性を訴えた。
キッズライン公式サイト
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HuffPost Japan

子どもに関わる仕事をする人に性犯罪履歴がないことを証明するシステムの創設を訴え、子どもがベビーシッターや教師から性被害を受けた母親と保育事業者が7月14日、記者会見を行った。

ベビーシッターのマッチングサービス「キッズライン」の男性シッター2人が、保育中の子どもに対する強制わいせつで逮捕された事件は、子どもを持つ多くの親や保育関係者に衝撃を与えた。

会見に参加した認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事は「保育現場があろうことか性犯罪の温床になっている。前科者が保育・教育現場に戻ることができ、事業者も性犯罪者を判別することができない。性犯罪歴がある人が保育現場に立ち入ることを事前に防ぐ仕組みがない」と指摘。

イギリスで運用されている個人の犯罪履歴チェックを行う公的サービス「DBS(Disclosure and Barring Service)」の日本版の導入の必要性を訴えた。

日本版DBSの創設を求める記者会見
日本版DBSの創設を求める記者会見
Kasane Nakamura

DBSとは?

イギリスでは個人の犯罪履歴がデータベース化され、一定年齢以下の子どもと関わる仕事をする人は、ボランティアであってもDBSに照会して無犯罪証明書を発行してもらう必要がある。法務省が管轄する公的サービスとして運用されている。

無犯罪証明書がない人は子どもに関わる仕事に就くことはできず、働いた場合は、本人だけでなく雇用者も罪に問われるという。

一方、日本では、保育や教育の職に関わる人が罪を犯して免許が失効しても、教員免許なら3年、保育士資格なら2年が経過すれば再取得が可能となっている。民間の派遣ベビーシッターは資格を必要とされないことも多く、小児性犯罪歴がある人でも簡単に子どもと関わる仕事に就くことができる。

小児わいせつは、他の性犯罪と比べて再犯率が高いのが特徴だ。

駒崎さんは「あと何人子どもの被害者が出たら国は動くのか。再犯を芽のうちにつむ。諸外国では当たり前のように運用されているこの仕組みが、なぜ我が国では存在できないのか」と強調。

日本でも、里親登録や無犯罪証明書が必要な外国で働く際には、警視庁から犯罪経歴証明書を発行してもらうことができる点に触れ、「ある種の政治の不作為」だと語った。

会見で語るキッズラインの男性シッターによる小児性被害者の母Aさん
会見で語るキッズラインの男性シッターによる小児性被害者の母Aさん
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被害女児の母「性犯罪者が紛れているとは思いもしなかった」

会見には、キッズラインの男性シッターから娘が被害に遭ったという母親のAさんと過去に担任の教師から娘が性被害に遭ったという母親も出席。被害者の立場からも、日本版DBSの導入の必要性を訴えた。

5歳の娘がキッズラインの男性シッターから被害に遭っていたという女性は、「子どもの性被害に親はこんなにも気づけないんだなということを痛感した」と事件を振り返った。

母親によると、シッター中にトイレを済ませた後に性器を触られる被害に遭ったという。

母親は「何をされているのか、親に言うべきことなのかも分からず、恥ずかしい気持ちもあったようです。5歳の娘の言葉でしか状況を知ることができず、心の傷はいかばかりか。子ども思いの保育士が多い印象だったので、性犯罪者が紛れているとは思いもしなかった」と語った。

会見で担任教諭から娘が受けた被害について語る母Bさん
会見で担任教諭から娘が受けた被害について語る母Bさん
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小学3年生の娘が担任の男性教諭からわいせつ被害に遭ったという母親も、「元担任が再び他県で教壇に立ってほしくない。過去の性犯罪歴を、期間の定めなく開示し、一度の犯罪行為で二度と教壇に立てなくなるようにしてほしい。それができれば、抑止力になると思う」と訴えた。

保育事業者「幾重にも防止策を取っても、完璧には見抜けない」

キッズラインの男性シッターの1人目が逮捕されたのは2020年4月。5歳の男児の下半身を触った強制わいせつの疑いで逮捕された。その2カ月後、2人目の男性シッターが5歳の女児への強制わいせつの疑いで逮捕された。

逮捕された2人が保育士資格を持っていたことや、1人目の容疑者が前職でも同様の事件を起こしていたことは、雇用主の対策だけでは事件を未然に防ぐことの難しさを浮き彫りにしている。

病児保育や障害児保育などを手がけるフローレンスでは、保育士やシッターは正社員として雇用している。採用の際に、現場での性犯罪リスクを減らすため、以下のようなスクリーニングを行なっている。

・対面で2回以上、専門スキルのあるメンバー複数人による面接

・書類選考の段階で賞罰の有無を問う

・嗜好や偏向を総合的に判断できるような外部テストを採用した適性検査

このほかにも、入社までに複数人が接点を持つようにしたり、入社後も座学や現場で1カ月の研修を行い、現場の目も入るようにしたり。特に、マンツーマンで密室で行うシッターの場合は、巡回でのチェックも行なっているという。

駒崎弘樹さん
駒崎弘樹さん
HuffPost Japan

だが、駒崎さんは言う。

「幾重にも防止策を取っているが、完璧に犯罪歴に気付けるかと言えば、なかなかそれは難しい。自己申告では嘘もつけるし、適性検査も面接も完璧ではない」

「無犯罪証明書を発行してもらう仕組みがあれば、再犯を防げると思う」

オンライン署名サイトでも

署名サイト「change.org」では、現役シッターによる無犯罪証明書の発行を求めるオンライン署名活動が行われている。

代表の参納初夏さんは「自信を持ってシッターとして子育て家庭のサポートに当たるため、シッターとして働くスタッフの信用を守るためにも、行政による無犯罪証明書の発行をお願いしたい」と語った。

日本版DBSの創設を求めるオンライン署名活動
日本版DBSの創設を求めるオンライン署名活動
chang.org

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