コロナ禍による医療機関の経営難が深刻な問題となる中、2020年の夏のボーナスを昨年より引き下げた医療機関が約3割に上ることが、日本医療労働組合連合会(医労連)の集計で分かった。
■患者減やコロナ対策費で赤字に
医労連は、加盟する医療機関を対象に2020年の夏のボーナスを尋ね、6月30日までの回答を集計した。回答した338機関のうち、115機関(34%)でボーナスの額が昨年より引き下げられていた。「全く支給しない」と答えた医療機関も2つあったという。
医労連によると、ボーナスを減らす最大の理由は「コロナ禍による外来患者や入院患者数の減少、感染予防対策のための諸経費や人件費の増加」。東京都や大阪府など、新型コロナウイルスの患者数が多い都市部を中心にボーナスカットの影響が大きく出ているという。
回答を集計した医労連の担当者は、「コロナの患者を受け入れているかどうかにかかわらず、職員たちは常に感染リスクにさらされながら、発熱チェックや感染予防対策にあたっています。コロナによって通常よりも業務が加重になる上、極度の緊張感の中で働いている職員にとって、ボーナスをなくされたり半分に減らされたりすれば気持ちの糸が切れてしまいかねません」と話す。
■「誰が看護するんですか」
東京女子医科大は、組合側に「全く支給しない」と回答した医療機関の一つ。同大労組のウェブサイトには、ボーナスゼロとの回答に対する組合員の抗議や不安の声が掲載されている。
「コロナで大変になり始めた時期から、心身ともにきつい場面がありました。でも給料のため、ボーナスのため、自分が生きていくために歯を食いしばって頑張ってきました。(中略)私たち看護職がいなくなったら、誰が看護するんですか?誰が患者さんを見るのですか?」(20代女性、看護師)
「コロナのことがあるので今までのような額の支給は期待していませんでしたし、それでもしょうがないと思っていましたが、まさか支給なしになるとは思いませんでした。
病院の指示通り行動を自粛し、パスポートも出しました。(中略)業務内容は一切変わらないのに、昇給もしていないし、一時帰休だって受け入れて、収入は減る一方です。なのにこの仕打ちはひどいと思いました」(20代女性、看護師)
■退職者が増えれば「深刻な事態に」
医労連の担当者は、東京の感染者数が増加傾向にある中、こうしたボーナスカットの動きが医療体制に響く懸念も指摘する。
「夏のボーナスまではなんとか持ち堪えられても、コロナ禍で経営悪化が長引けば、耐えられなくなる医療機関も出てくる。そうなれば今年の冬のボーナスカットをする医療機関はさらに増えるでしょう。このままでは退職希望者が続出し、患者対応をする看護師らの人手も不足して、深刻な事態になりかねない」と危機感を募らせる。医労連は、国から医療機関に対する財政支援を求めている。