アメリカ・ハリウッドのエンターテインメント業界に対し、黒人俳優を中心に300人以上が「Black Lives Matter」運動の支援を求める公開書簡を発表した。
ロイターによると、「Hollywood 4 Black Lives」と題したこの公開書簡は、ドラマ『インセキュア』『殺人を無罪にする方法』などで知られるケンドリック・サンプソンさんをはじめ、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のテッサ・トンプソンさん、Black Lives Matterの創設者2人が執筆し、300人以上の著名人が署名した。
デモに参加し、ゴム銃で撃たれた経験から
アメリカ・ミネソタ州で5月に黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人の警察官に首を押さえ付けられ死亡した事件を受け、抗議デモが各地に拡大。
サンプソンは、ロサンゼルスのデモに参加した際に、暴動の中で警官にゴム銃で複数回撃たれ、警棒で殴られたことを明かしている。この公開書簡は、その経験をふまえ執筆したという。
また、イギリス・ロンドンのデモには、『スター・ウォーズ』シリーズのジョン・ボイエガさん、アメリカ・ロサンゼルスのデモには、『ブラックパンサー』『黒い司法 0%からの奇跡』のマイケル・B・ジョーダンさんなどが参加。自身の立場からハリウッドに変革を求める声をあげていた。
「黒人の人生に対して悲惨な結果をもたらした」
「Hollywood 4 Black Lives」では、「歴史的にも現状においても、ハリウッドは警察の暴力やアンチ黒人の文化を広めるのに力を貸しているのです」と指摘。ハリウッドに対し、白人の物語や警官の視点ばかりを取り上げるのをやめ、黒人の人々が持つ才能やキャリア、黒人を主人公とした話を取り上げるよう求めている。
アメリカの映画史の中では、黒人を犯罪者のように描くなど、人種差別を助長するような描写がされることがあり、問題視されてきた。
公開書簡の中では、「ハリウッドや大手メディアが、黒人を犯罪者として描き、法における誤った姿を映し、警察の腐敗や暴力を賛美してきたことは、黒人の人生に対して悲惨な結果をもたらしました」とし、実際に起きた警察官による黒人の殺害事件の一因になっていると、厳しく非難した。
また、その中にはトランスフォビア(トランスジェンダーに対する嫌悪)を描いた物語もあり、トランスジェンダーの殺人を正当化していると批判。「暴力的で法に縛られずに振る舞う警察官や捜査官を“ヒーロー”のように称賛することをやめなくてはいけません」と、今一度映画のストーリーやその設定を見直すことを求めている。
「黒人に差別的なコンテンツを取りやめる」など求める
また、作品における黒人の描写以外にも、ハリウッドでは黒人俳優の配役が限られ、また黒人のスタッフが少ないことなども問題となっている。
公開書簡の中では、「黒人主導の作品は世界的な興行収入が伸びず、普遍性に欠ける」という誤った考えをもとに、予算が削減されたり、十分に割り当てられなかったりする実態を指摘している。
これらハリウッドにおける不平等をあげ、公開書簡の中では、具体的に、「撮影現場やイベントからの警察の撤退」「黒人に差別的なコンテンツをやめる」「人種差別に反対するコンテンツに投資する」「黒人のキャリアに投資する」「黒人のコミュニティに投資する」 という5点を要求している。
『ブラックパンサー』主演俳優らが署名
署名に参加した主な著名人(敬称略)
『マイティ・ソー』のイドリス・エルバ
『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマン
『ドリーム』のオクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ
『ハリエット』のシンシア・エリヴォ
『グローリー/明日への行進』デヴィッド・オイェロウォ